研究課題
挑戦的萌芽研究
炭疽は細菌のなかでも最も毒性の強い炭疽菌による急性感染症であり、そのワクチン開発に関しては、これまでに多角的な研究が行われてきた。しかし、これまでの抗炭疽生ワクチン及び成分ワクチンの試みはいずれも副作用が強く、有効性と安全性を兼ね備えた抗炭疽ワクチンの開発は未だ達成されていない。これまでの検討において、複合体を形成した炭疽菌毒素タンパク質の表面構造上に、防御効果の高い抗体産生を誘導する抗原領域が存在することが示されているが、複合体を形成したタンパク質の四次構造情報に基づく分子設計の手法や理論については未だブレイクスルーが見られない。本研究では、タンパク質の分子間相互作用部位を含む四次構造上の領域を標的とし、標的領域と一致した分子表面形状を示す新規人工タンパク質の設計方法を構築する。平成25年度は、初期段階として、炭疽菌毒素タンパク質複合体上における分子設計の標的領域を探索した。特に、本研究計画の根幹となる「分子間相互作用部位を含めた多分子間にわたる領域」の抽出に注力した。我々が作出した人工分子の一つは、in silico 分子シミュレーションの結果、水溶液中で安定な構造を維持することが示された。また、大腸菌を用いた異所性発現系において可溶性画分に発現することを見いだし、目的分子の高純度精製系の構築に成功していることから、この人工分子の構造解析及び機能解析を遂行する準備が整っている。現在、この人工設計分子の詳細な生理的機能を検討するとともに、ワクチン抗原としての有効性を評価するための動物実験を遂行している。
2: おおむね順調に進展している
本課題は申請段階において十分な予備的検討を行っていた結果、研究計画は当初の実験計画通り順調に進展している。今後も研究計画に沿い研究を遂行していく。
平成26年度は、当初の計画通り、実験動物を用いた人工設計分子の機能解析を行う。前年度までに構築したタンパク質発現系、高純度精製系を用いて目的分子を大量精製した後、実験動物(マウス)に接種する。ELISA等の手法によりその抗体産生能を検討するとともに、宿主における免疫応答および毒性発現の観点から、人工タンパク質の詳細な生理的機能を明らかにする。将来的には、北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターザンビア拠点のP3実験施設を利用した炭疽菌感染実験により、個体レベルにおける抗炭疽防御効果の検討を行う。さらに、結晶構造解析、NMR解析を利用した立体構造解析を行い、その結果を理論的な人工分子構造と比較することにより設計手法の精度と理論の妥当性を評価していく。
本研究推進のために雇用した実験補助員の給与支払いのため年度末の給与を4月中に支払う。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)
Genome Annoucement
巻: 2 ページ: e00116-14
10.1128/genomeA.00116-14.