研究課題
生体レベルの研究は基本的にヒトを標的としているものの、その研究は主としてマウス、ラットなどの小動物を用いている。このような研究の最大のバリアは、小動物で得られた知見が必ずしもヒトの事象を具現しているわけではないということである。感染症研究でもしかりである。本研究は、細菌毒素を導入口として、細菌感染症研究における小動物ーヒトのバリアを埋める動物モデルとしてコモンマーモセットを汎用化することを目的として実験を行い、以下の結果を得た。1.コモンマーモセットの取扱や麻酔等の平準化を行ったあと、ブドウ球菌エンテロトキシン(SE)の催吐活性の測定法を確立し、SEAなどを経口投与しSEファミリー分子を評価したところ、スンクスと同等の催吐感受性を示した。一方、SEファミリーの類似分子であるSSLはスーパー抗原及び催吐活性はないとされてきたが、コモンマーモセットではSSL5及びSSL7で催吐活性が認められ、SSLの新たな機能が発見された。2.SEAはスンクスの腸管ループ試験において下痢誘導活性は認められず、下痢とは無関係であると考えられていたが、コモンマーモセットの腸管ループ試験ではSEAに明瞭な下痢誘導活性が認められ、ヒトにおいてSEAは嘔吐とともに下痢を誘導する可能性が示唆された。3.SEAのコモンマーモセットにおける催吐誘導活性を検討したところ、スンクスと同様に神経細胞を介したセロトニン依存性の経路と肥満細胞の脱顆粒促進によるセロトニン非依存性の経路が共存する可能性が示唆された。以上、コモンマーモセットを用いることにより、細菌毒素の新機能が発見された。従って、コモンマーモセットは、細菌感染症の解析におけるよりヒトに近いモデルとしてきわめて有用であることが明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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