研究課題/領域番号 |
25670209
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三室 仁美 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (80396887)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 細菌 / ヘリコバクターピロリ / ワクチン |
研究概要 |
本研究では、腸管免疫系の外部抗原取り込み門戸として重要である、腸管リンパ組織のパイエル板 (Peyer’s patches, PP)や、孤立リンパ小節などの、消化管関連リンパ組織 (Gut-associated lymphoid tissue, GALT) をターゲットとするアジュバント活性物質を探索する。具体的には、PP透過型細菌である球状型へリコバクターピロリ (Helicobacter pylori, ピロリ菌)と、非透過型細菌であるらせん型ピロリ菌との比較から、PP透過に必須の分子群を同定して、その分子構造を解析することで、PP透過機構をターゲットとするモジュール分子を設計する。さらに、新規アジュバントモジュール分子そのもの、もしくは、モジュールを発現する細菌を抗原と結合させることで、新たなPPターゲティング型ワクチン開発の可能性を検証することを最終目的とする。 平成25年度は以下の成果を得た。 パイエル板透過型細菌である球状型ピロリ菌と、非透過型細菌であるらせん型ピロリ菌の、外膜タンパク質発現パターンの網羅的解析を、LC/MS/MSによるショットガン法により実施した。その結果、球状型菌に特有の複数のタンパク質を同定した。 また、両菌体の発現プロファイル比較をRNA-seqにより行った結果、複数の球状体特異的候補遺伝子を同定した。 現在これらターゲティング候補分子群のうち、複数の菌株に共通するものを、重要性が高い候補遺伝子として選定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、球状型ピロリ菌に特有の菌体因子を複数同定することができた。これにより、パイエル板ターゲティング型ワクチンモジュール分子同定を大きく進展させることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は以下の研究を行う。 平成25年度に同定したパイエル板ターゲティング候補分子群のうち、複数の菌株に共通する因子を候補因子として選定する。選定した因子の欠失変異ピロリ菌を作製し、菌体の運動能、増殖能、上皮細胞付着能などの一般的性状をin vitroで確認する。その後、PP透過効率における候補分子の影響を、マウスもしくはスナネズミを用いた動物モデルでの腸管ループアッセイを行い、精査する。具体的には、腸管ループ内に個々変異菌株を注入し、一定時間後にパイエル板を摘出し、組織染色に供して、パイエル板内部への菌体透過効率を精査する。これらの検討により、パイエル板ターゲティング候補分子を同定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
プロテオームおよびRNA-seq解析のためのサンプル調製が首尾よく進行したため、予定していた試薬を購入しなくとも成果を得ることができた。 当初計画よりも多数の候補因子を同定することができたため、次年度には、予定よりも多数の組換え菌の作製と、動物を用いた評価が必要となる見込みである。そのため、当該年度に生じた次年度使用額は、組換え菌の作製のための試薬やプラスチック消耗品と、実験動物費用として使用する予定である。
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