研究課題/領域番号 |
25670211
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
戸邉 亨 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70207596)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 物質輸送 / 薬剤耐性因子 / LPS |
研究実績の概要 |
前年度までの研究から、細菌の作る膜胞 (outer membrane vesicle)の簡単な検出系を確立し、膜胞の産生条件および大腸菌の菌株の選定を確定した。膜胞の精製方法には、超遠心分離を用いることが一般的であるが、真核細胞の膜胞であるエキソソーム精製キットやpolyethylen glycol (PEG) 沈殿法による方法も試み、簡便にはPEG沈殿法で充分であることを確認し、以降の実験をPEG法で行なうこととした。ペリプラズムあるいは細胞質に発現させたMBP (Maltose binding protein)を指標にしたOMVに含まれるタンパク質についての検討で、ペリプラズム以外にも細胞質由来のタンパク質も含まれる可能性が示唆された。そこで、抗生剤耐性因子を指標にして、OMVを介した物質の輸送の可能性を検討した。カナマイシン感受性菌を耐性菌と混合培養し、カナマイシン添加後に感受性菌の生存率を計測したところ、混合培養しなかった場合と比較し、感受性菌の生存率の有為な上昇が認められた。このとき生育した菌は、カナマイシンに対する耐性を恒常的には示さなかったことから遺伝子の獲得によるものではないことが確認できた。そこで、耐性菌の培養上清よりOMVを精製し、感受性菌と混合した後、カナマイシンに曝露し生存率に対する影響を検討した。まだ予備的な検討の段階であるが、単純にPEGで沈殿させたOMV画分を添加して培養しただけでは、感受性菌の生存率は上昇しなかった。OMVの精製方法や添加条件を検討する必要があり、現在検討中である。一方、LPSの免疫原性を弱めるために、一部の病原菌(サルモネラ菌や腸管出血性大腸菌など)のもつLipid Aの脱アシル化酵素をコードするlpxR遺伝子をクローン化し発現させ宿主細胞の炎症応答について検討している。OMVを刺激性の少ないデリバリーシステムとして構築するために重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画である、1)膜胞内への物質の取り込みの検討、2 )物質輸送の検出系の作成、について、それぞれ順調に成果をあげている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、膜胞産生の条件、膜胞に取り込まれる物質の解析、細菌間における物質輸送の検出系の作成について進める。また、免疫原性の低下したLPSを作成する手法も引き続き検討する。さらに、特定の細菌を標的にしたターゲッティング方法の検討を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の成果は順調に出ているが、まだ成果を発表する段階ではないため学会発表や論文投稿にかかる費用を次年度に持ち越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
成果を学会および論文として発表する。
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