研究実績の概要 |
本研究では,Notch/IL7-Rα/CD30Lの一連のプロセスがIL-17A産生T細胞の機能分化と生体防御機構としての働く機序を解明し,Notch/IL7-Rα/CD30L による免疫制御法の開発研究を行う.本年度はIL-17A産生γδ型T細胞の生体恒常性におけるNotch/IL-7Rα/CD30L経路の関与を調べるために,Notch標的遺伝子の網羅的遺伝子解析をICN1(intracellular Notch1)に対する抗体を用いたChIP-seqを行った.その結果,Hes1,TCF1,CD25,BCL11b,Nr4a1 に加えてIL-7Rαの新規プロモーター部位を同定できた.一方,CD30LはICNが結合しないことがわかった.恒常的なNotchシグナルは,試験管内だけでなく生体内においてもγδ型T細胞上のIL-7Rα発現を誘導する潜在能力を有した.一方でRBP-Jκの条件付き遺伝子破壊は,γδ型T細胞によるIL-7Rα発現を抑制したがHes1発現を抑制せず,末梢組織でのIL-7Rαhigh IL-17A産生γδ型T細胞の貯蔵量を選択的に減少させた.成体マウスでは,IL-7Rαを介したシグナルの欠如によってIL-17A産生γδ型T細胞はほとんど維持されなかった.試験管内で外因性のIL-7を加えると,選択的にIL-17A産生γδ型T細胞が増殖した.以上,我々の結果は,Hes1とは独立したNotch-RBP-Jκ-IL-7Rα経路の,IL-17A産生γδ型T細胞の生体恒常性に対する新たな役割を明らかにした. 次にCD30L/CD30遺伝子欠損マウスを用いて、IL-17A産生αβT細胞の末梢組織で機能分化におけるCD30L/CD30シグナルの役割について検討を行った.CD30LまたはCD30 KOマウスの末梢組織で抗原特異的IL-17A産生CD4T細胞の産生が有意に減少した.骨髄キメラマウスの解析によると,骨髄由来細胞のCD30Lが特に重要であり,CD4 T細胞のCD30L逆方向性シグナルはTh17細胞分化に必要ではなかった.以上より,CD30L/CD30シグナルは,抗原特異的CD4 Th17細胞応答に関わっていることが明らかとなり,このCD30L/CD30シグナルがTh17細胞関与する炎症性疾患の新たな治療標的となる可能性が示された.
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