本研究の目的のためにコロナウイルス科と同じニドウイルス目に属するアルテリウイルス科のウイルスを選択した。PRRSV(pocine reproductive and respiratory syndorome virus: 豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス)はアルテリウイルス科に属し、近年の養豚界で大きな問題になっている。PRRSVは変異やリコンビネーションを頻繁に起こすことが知られているので、本研究のために変異の少ない領域を見出し、検出プライマーをデザイン・作成した。次に、PRRSVのようなウイルスを認識する分子認識素子を開発する際に重要となるのは、ウイルスの外殻タンパク質のアミノ酸配列が多少変化しようが同様に認識できることである。変異が生じてもウイルスのサイズは大きく変化するものではないのでウイルスのサイズを認識し、多点でウイルスを保持できるアプタマーネットの開発を目指した。既に3次元的な網目状になったDNAワイヤー上にアプタマーを配置する技術は開発しているので、標的分子の異なる部位を認識する多点認識アプタマーの探索方法を開発した。標的分子の異なる部位に結合するアプタマーは数nm程度の距離で近接していると考えられ、そのように近接した場合だけ共有結合を形成するスクリーニングシステムを考案し、モデルとしてトロンビンを対象とした多点認識アプタマーを探索したところ、新規のトロンビン結合アプタマーを探索することに成功した。従って多点認識アプタマーが作製できることが確認された。また、アプタマーを立体的な網目上に配置する方法としては、4本鎖の連続したグアニンを有する配列が形成するG-quardruplexをコアとし、これが網目状につながる構造を設計し、その中に血管内皮伸長因子に結合するアプタマーを挿入し、AFMで観察したところ想定したような網目構造が形成されていることが確認できた。
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