研究課題
新世代抗体医薬としての特殊環状ペプチドに着目し、高病原性トリインフルエンザウイルス(H5N1)のヘマグルチニン(HA)に結合し、亜型を超えたインフルエンザウイルス感染阻害活性を示す特殊環状ペプチド(iHA)を探索した。チオエーテル環状化ペプチドライブラリーを無細胞翻訳系で発現させ、組換えワクシニアウイルスベクターで発現させたインフルエンザウイルス(H5N1 clade2.2) HAタンパク質と高い親和性で結合したペプチド(iHA)について、ウイルスの中和活性、増殖阻害活性及びHA膜融合に対するiHAの阻害活性を検討した。さらに、H5N1およびH1N1の致死性感染マウスモデルを用い、iHAの感染防御効果および治療効果を検討した。新たに取得したiHAは、高病原性株を含む多様なクレードのH5N1ウイルスの感染阻害(中和および増殖阻害)を示し、さらに同じくGroup1に属するH1, H2亜型ウイルスの感染増殖も顕著に阻害した。このiHAは、HAによる膜融合活性を濃度依存的に阻害した。致死性感染マウスモデルにおいて、iHAの腹腔内投与および鼻腔内投与は感染防御効果および治療効果を示した。特に、感染4日後からの投与において Zanamivir投与群では治療効果を示さないのに対し、iHA投与群では有意な治療効果を示した。特殊環状ペプチドiHAは、Group1に属する亜型ウイルスの感染阻害活性を示すことが明らかとなった。このiHAの作用機序として、中和活性に加え HAによる膜融合活性を阻害することも明らかとなった。このように、iHAはNA阻害剤とは作用機序が異なるため、NA阻害剤に耐性を獲得したウイルスに対しても効果を示し、また感染後期においても十分な治療効果を発揮すると考えられる。
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