研究課題
腸管内寄生虫は宿主から排除されるのを防ぐために、宿主免疫を抑制することが知られている。また、近年、全身の免疫応答が腸内細菌によって制御されていること、腸内細菌が炎症性疾患や感染症に密接に関連していることが明らかになってきた。本研究では、腸管内寄生虫が誘導する著明な免疫抑制に腸内細菌が関与しているという仮説を検証した。ネズミ腸管内寄生性線虫、Heligmosomoides polygyrus(以下Hp)をマウスに感染させ、糞便中の腸内細菌のDNAを抽出し、PCRにてリボゾームRNAの16Sサブユニット遺伝子を増幅し、次世代シークエンサーを用いて網羅的に腸内細菌叢を解析した。感染マウスでは、わずかに一部の細菌の増減が認められただけであった。また、抗生物質を飲水投与し腸内細菌を減じたマウスにHpを感染させても、Hpの感染動態に変化は見られなかった。このことから、Hp感染と腸内細菌の関連性は希薄であると思われた。しかしながら、予想外に赤血球寄生性のマラリア原虫を感染させると、下痢等の腸管症状を伴い、腸内細菌叢が著しく変化していることが明らかとなった。これは、免疫変調が認められる致死性マラリアモデルにおいて顕著であった。マラリア患者、あるいは実験モデルにおいても免疫抑制が見られることから、マラリアにおける免疫変調に腸内細菌が関わっていることが示唆された。
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