CD4T細胞は活性化後にサイトカインの分泌や細胞表面分子の発現を介して免疫応答を調整するとともにメモリーT細胞としても維持される。また、胚中心では活性化B細胞の抗原親和性が亢進するが、この胚中心の形成、B細胞の分化に胚中心CD4T細胞が必須である。私たちはこれらメモリーCD4T細胞、胚中心CD4T細胞分化に転写因子Bcl6が関わっていることを報告した。しかし、これらT細胞の機能分化がいつからどのような機構で決定されているかの詳細は、明らかにされていない。そこで本課題では活性化前のナイーブT細胞の分化機構の解析を目的とする。 マウスのナイーブCD4T細胞の表面抗原をFACSで解析した結果、Ly6ChighとLy6Clowとの2種の細胞が存在することを見出した。Ly6Chighの細胞は、活性化後にIFNg、TNFa、IL2を多く産生しLy6Clowとは機能的に異なる細胞である可能性が示唆された。 この2つの細胞を分取し分化に関わる転写因子の発現を比較した結果、Ly6Clow細胞でBcl6の発現が高く、Bcl6欠損マウスではLy6Clow細胞が著減していたことから、Ly6Clow細胞の分化にBcl6が必要であることが明らかになった。 胸腺CD4T細胞でのLy6Cの発現はBcl6欠損CD4T細胞でも野生型CD4T細胞でもともに認められなかったが、これらを野生型マウスに移入するとBcl6欠損CD4T細胞でLy6Cの発現が有意に上昇した。さらに、胸腺CD4T細胞をさまざまなに刺激しLy6Cの発現を誘導する因子を検索した結果、IFNa、IFNg刺激でLy6Cの発現誘導が引き起こされることを見出し、Bcl6欠損CD4T細胞ではより低濃度でLy6Cの発現が誘導される結果を得た。 本研究からナイーブCD4T細胞は単一の細胞集団ではなく活性化後に異なる機能を示す複数の細胞が存在し、Bcl6はIFNa、IFNgの感受性を調整することで、ナイーブCD4T細胞の分化に関与していることが示唆された。
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