研究課題
3型自然リンパ球(ILC3)は転写因子RORγt依存的に分化成熟し、リンパ組織形成や粘膜組織バリア機能の維持に重要な役割を果たす。IL-17産生性のTh17細胞やγδT細胞もまたRORγt依存的に分化し、末梢組織における病原体からの生体防御や関節リウマチ、乾癬等の自己免疫疾患に重要な役割を果たす事が知られている。しかし、ILC3とT細胞分化は分子レベルでの共通項が多く、生体におけるILC3特異的な機能解析はこれまで不可能であった。本研究では、T細胞とILC3の分化段階において発現する指標遺伝子の時間的差異を利用し、ILC3特異的に欠損可能なマウス(ILC3ではジフテリア毒素受容体(DTR)を発現するが、T細胞系列のマウスではDTRを発現しないマウス)の作成を試みた。まず、RORgtプロモーターの直下にloxp配列で挟まれたDTR-EGFP遺伝子をもつトランスジェニックマウスをBAC transgenic マウス作成技術を用いた作成を試みた。しかし、得られたファウンダーにはEGFPシグナルの発現は観察されなかった。次に、EGFP-loxp-DTR-KuO-loxp配列を再構築し、HEK293T細胞における発現を再確認後、RORgt遺伝子の1st Met以下にEGFP-loxp-DTR-KuO-loxpを発現するターゲッティングベクターを作成した。CRISPR/Cas9によるDNA2重鎖切断および相同組換え技術を利用し、EGFP-loxp-DTR-KuO-loxp遺伝子のRORgt遺伝子の1st Met以下へのノックインを試みた。受精卵へのインジェクションの結果得られた産仔のうち、4匹に目的領域へのノックインが認められた。現在、これらのマウスの系統化と、Lck-Creマウスとの交配をすすめ、ILC3特異的欠損マウスの作成を行っている。
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