脊椎動物には、一度感染した病原体に対して抵抗性を持つ「獲得免疫」が備わっている。原始的な脊椎動物である無顎類の免疫系を調べることによって、獲得免疫システムの起源とその進化を理解しようと試みた。本研究では、無顎類のヌタウナギにおいて自己に反応する抗体を排除する負の選択機構が存在することを示すとともに、MHCに相当する候補分子としてアロ白血球抗原を同定することに成功した。この研究成果は、獲得免疫の理解やMHC分子の進化的な起源に迫るのみでなく、クローン選択説の自己免疫寛容のメカニズムを再考する上で重要な知見であり、将来的には組織移植時の拒絶反応や自己免疫疾患の理解にも繋がることが期待される。
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