研究課題/領域番号 |
25670231
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
松本 満 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 教授 (60221595)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | zebrafish / AIRE遺伝子 / 形態形成 |
研究概要 |
遺伝性自己免疫疾患の原因遺伝子AIREの機能解明は胸腺における「自己・非自己の識別機構の解明」の鍵を握ると考えられる。しかしながら、AIREがどのようなメカニズムによってその機能を発揮するかについては未だに不明な点が多い。AIREは胸腺髄質上皮細胞に特異的に発現する転写因子と考えられていたが、私どもはAIRE発現細胞を対象とするfate mapping(運命写像)を行う過程で、AIREが胸腺での発現に先立ち、原腸陥入(gastrulation)以前の発生初期に発現する事実を見い出した。本研究では初期発生におけるAIRE発現の意味を初期発生の解析に適したモデル生物であるzebrafishを用いて明らかにする研究に取り組んでいる。すなわち、zebrafishにおいてもAIRE遺伝子のhomologue(z-aire)が存在することを確認した上で(accession No. EU042187)、z-aireのantisense morpholino (z-aire MO)をzebrafish初期胚に注入し、z-aireノックダウンによる表現型を解析した。本年度の実験においては、z-aire MOの特異性を明確にするためにz-aire MOの5 base mismatch MOの注入実験を対照として行った。その結果、z-aire MOの注入によって、躯幹や尻尾の形態異常を示す個体を多数認め、少なくともzebrafishにおいては、AIREが初期発生における役割を持つことが示唆された。一方、z-aireノックダウンによる表現型が野生型AIREによってrescueされることを、in vitro transcriptionによって作製したhuman AIRE RNAの同時注入によって確認する実験を行っているが、現在のところ、まだrescueの確認には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
zebrafish初期胚にmorpholinoを注入し、その形質を解析する実験系を構築し、研究を継続・進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に、併行して樹立を試みたz-aireノックアウトゼブラフィッシュは、antisense morpholinoを用いたz-aireノ ックダウンゼブラフィッシュに比べ、表現型、遺伝子発現の安定性から、z-aireの標的遺伝子を同定するためのarray解析の理想的な実験材料を提供してくれるものと考えられる。そこで、 (1)z-aire欠損に伴う発現遺伝子変動の解析として、z-aireノックアウト初期胚、および対照初期胚から調製したRNAを用いてarray解析を行い、z-aireの標的遺伝子を検索する。その際、z-aire抑制個体の表現型から、既にその 候補となっているWnt、SHH系に関わる遺伝子を重点的に拾い上げる。 (2)z-aire過剰発現初期胚の解析として、z-aireノックアウトゼブラフィッシュの樹立とは逆に、ゼブラフィッシュ 初期胚へのz-aire RNA注入によるgain-of-function実験を行い、z-aireの個体レベルでの作用をより明確にする 。z-aire過剰発現による表現型が、AIREの標的遺伝子の発現上昇によるものであることを当該遺伝子の定量PCR 法によって確認する。 (3)AIREの標的遺伝子への作用様式の解析として、z-aireの標的遺伝子を同定後は、AIREによる標的遺伝子の作用メ カニズムを分子生物学的・生化学的手法を用いて明らかにする研究にも取り組む予定である。
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