哺乳類Aireのゼブラフィッシュhomologue(z-Aire)をデータベース上で特定し、初期発生におけるz-Aireの機能を明らかにする目的で、前年度はz-Aireのアンチセンス・モルフォリノをゼブラフィッシュ初期胚に注入した。その結果、尾の湾曲や心臓の形成不全といったきわめて特徴的な表現型が出現し、ゼブラフィッシュの初期発生過程にAireが重要な役割をもつことが明らかになった。しかしながら、モルフォリノを用いたノックダウンではいわゆるoff-targetの表現型である可能性が除外出来ないので、本年度はTALENによるz-Aireノックアウトゼブラフィッシュの樹立を試みた。すなわち、TALEN法は従来のモルフォリノを用いた一時的なノックダウンと異なり、ゲノムレベルで安定変異体を樹立出来る革新的な遺伝子改変技術である。本技術を用いてz-Aireノックアウトゼブラフィッシュを樹立する目的で、エンドヌクレアーゼDNA切断ドメインをはさむTALE DNA結合ドメインをz-AireのExon 2を標的として設定し、Voytasらの報告に従い(NAR 2011)、対応するrepeat-variable di-residue(RVD)発現ベクターを構築した。次いで、in vitro transcriptionにより、標的領域(Exon 2)をはさみ込むRNA産物を合成し、ゼブラフィッシュ初期胚にマイクロインジェクション法によって注入し、ゼブラフィッシュを発生させた。性成熟に達した時点でF1胚を取得し、F1胚ゲノムのz-Aire Exon 2が期待通りinsertion/deletionによって変異した個体を選別し、ノックアウトラインを樹立することに成功した。今後は、こうして樹立したヘテロ個体の掛け合わせにより、z-Aireノックアウトゼブラフィッシュを大量に取得し、より詳細な表現型の解析を進める予定である。それによって、Aire欠損マウスの解析のみからでは不明であった自己寛容の成立機構におけるAireの役割を明確にする。
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