研究課題/領域番号 |
25670233
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
木村 彰宏 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20533318)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アルカロイド / IL-6 / マクロファージ / LPS |
研究概要 |
ハルミンの標的因子Xをマクロファージ(RAW細胞)に安定発現させ(RAW/X)、コントロール細胞(RAW/Neo)とともにLPSまたはLPS+ハルミンで刺激し、IL-6の産生を比較した。その結果、LPS+ハルミンの刺激においてRAW/X細胞ではハルミンによるIL-6産生抑制がコントロール細胞よりも有意に強いことが明らかになった。このことからハルミンによる炎症性サイトカインの産生抑制効果は標的因子Xを介していることが示された。一方で、ハルミンはLPSにより誘導される抗炎症性サイトカインであるIL-10の産生を促進する。このハルミンによるIL-10産生促進に関しても標的因子Xを介して行われていることが判明した。また非常に興味深いことに、RAW/NeoおよびRAW/XをLPS単独で刺激するとIL-6の産生がRAW/Xにおいて有意に抑制されていることが明らかになった。この結果は標的因子Xが炎症応答を抑制するはたらきがあることを示唆している。 次にLPS投与によるエンドトキシンショックに対するハルミンの効果を調べた。LPSとハルミンを同時に投与したマウスではLPS単独投与のマウスに比べて生存率が有意に改善することが示された。ハルミンの類似体であるハルマリンやハルマンなどの投与においても生存率が改善したことからハルミンなどのアルカロイド系化合物は免疫応答を抑制する作用があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにマクロファージにおけるハルミンの標的因子Xを同定していたが、実際に標的因子Xを介しているかは不明であった。今回ハルミンの標的因子Xを介してハルミンが炎症性サイトカインの産生を抑制していることが示されたので、マクロファージにおけるハルミンと標的因子Xの関連は証明された。また、ハルミンのin vivoにおける効果も確認でき実際に炎症抑制剤として利用できる可能性も示された。 以上の結果から本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はハルミンによるin vivoにおける効果においても標的因子Xを介しているのかを標的因子X欠損マウスを用いて確認する。また、T細胞においてもハルミンが標的因子Xを介して効果を発揮するのかを検証する。T細胞においてハルミンが標的因子を介していないことが示されれば、半田ビーズを用いてT細胞におけるハルミンの標的因子を新たに同定していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の実験においてはこれまでに購入されていた試薬などで実験を行うことができ、当初想定されていた物品費が抑えられたため。 新たな試薬の購入や研究成果の発表を行うために国内外の学会に参加するための旅費などに対して使用予定
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