前年度までに明らかとなってきた日本の女性医師のprofessional identity formation(PIF)に影響を及ぼしている背景について研究協力者である松井智子、加藤容子、錦織宏とともに考察をすすめた。日本の女性医師のPIFに及ぼしているものとして、医師となり研修をしていく中で形成されていく医師であることを最優先とする価値観や、年齢や研修の区切りなどをきっかけに重視するようになるジェンダー・ステレオタイプに適応することを良しとする価値観があることがわかった。PIFにはプロフェッショナルアイデンティティとパーソナルアイデンティティの形成がともに重要であるが、上記のように女性医師達はジェンダー・ステレオタイプの影響を強くうけたパーソナル・アイデンティティを形成していたことがわかった。この結果については、第48回日本医学教育学会にて口頭発表を行った。 また、本研究の目的の一つである仕事の価値観の相違への理解を深めるためのモデルワークショッププログラムを開発するための第一段階として、岐阜大学で行われた第61回医学教育セミナーとワークショップにて、「医師のプロフェッショナルアイデンティティ形成(PIF)を考える」というタイトルでのワークショップを開催した。このワークショップでは、自身のパーソナル・アイデンティティの形成を振り返るセッションの後、様々なパーソナル・アイデンティティをもつ医師を題材とした8つのシナリオについてのグループディスカッションを行った。尚、ワークショップ参加者については、様々なPIFを持つ医師の存在への気づきや理解については女性医師のみの問題ではないことから、参加者対象を教員・指導医・研修医・医学生とし、当日は医師以外の職種も含む計24名が参加した。
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