頭痛は日常診療において最も重要な症状・疾患の1つである。頭痛の診断には国際頭痛分類を念頭に置いた適切な医療面接が不可欠であるが、医学部における従来の教育方法では頭痛に関する十分な診断能力の習得は困難であると考えられる。国際頭痛分類に基づいた種々の頭痛症例シナリオによる医療面接を中心とした実践的な模擬患者協力型頭痛診療シミュレーションプログラムを構築、実践し、その有用性を検証した。 平成25年度は、次年度に行う頭痛診療シミュレーションプログラムのシナリオ作成、模擬患者トレーニング等の準備を行うとともに、コントロール群となる平成25年度医学科5年次学生を対象として、次年度5年次学生に対するシミュレーションプログラムで扱う疾患に関する小講義のみを臨床実習の中で行った。 平成26年度は、平成26年度5年次学生を対象として、前年度に作成した主な一次性頭痛(片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛)および重要な二次性頭痛(髄膜炎、薬剤の使用過多による頭痛)の症例シナリオによる模擬患者協力型頭痛診療シミュレーションプログラムを臨床実習の中で実施した。 プログラム内容の再検討、改良を重ねつつ、平成27年度、28年度も5年次学生を対象としてシミュレーションプログラムを実施した。 5年次にシミュレーションプログラムを実施したクラスの学生および実施していないクラスの学生のそれぞれを対象として、頭痛に関する客観的試験を6年次後期に行い、結果を比較検討したところ、プログラム実施群では非実施群に比べて得点が高い傾向が認められ、模擬患者協力型頭痛診療シミュレーションプログラムは知識の定着においても有用であることが示唆された。また、実習に対する満足度に関するアンケートでは、ほとんどの学生が「有用であった」「頭痛に関する診断能力が向上したと思う」と回答しており、モチベーション向上の面でも有用であると考えられた。
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