研究課題/領域番号 |
25670247
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
熊澤 利和 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (90320936)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Terminal Sedation / ターミナルケア / 緩和ケア / 緩和医療の質 / 価値 / ビハーラ病棟(Vihara Ward) / 権利擁護 |
研究実績の概要 |
本研究は、緩和医療におけるTerminal Sedationに関する情報提供について、患者への情報提供が意思決定可能な形で提示され権利擁護がなされていたか、さらに患者の家族への支援として医療情報の提供や医療における契約関係が、医療従事者-患者/家族間で公平な関係で成立していたかどうかを考察・分析することを目的としている。 1)当初計画では、緩和ケア病棟へのアンケート調査およびその結果を踏まえてのヒアリング調査を実施予定であったが、今年度は、ヒアリング調査の実施5回、研究打ち合わせ3回、学会報告1件、および先行研究の探索を実施した。 2)予定していた調査は、事前の医師へのヒアリング調査結果から、再度検討が必要となり延期をした。特に、①日々のケアに伴う感情労働や患者や家族に対する暴言・暴力により医療者は疲弊する、そのことから医療の入り口である「契約」について再考、②緩和ケアという臨床において治療/ケアにおいて「無意味」ということについて、調査への反映についてである。 3)先行研究の探索結果は、①ターミナルセデーション(terminal sedation を含む)をキーワードとする論文等(言語は日本語)は、9 件、同様に②鎮静は、329 件(内訳 意志決定に関する論文等12 件、権利に関する論文0 件)③セデーションは、110 件(内訳 意志決定について4 件、倫理について12 件)等であった。検索データベースは、①医中誌、②CiNii、③Pro Quest等を使った。セデーションをキーワードとする論文の内訳は、症状緩和、ガイドライン、麻酔等のキーワードが使用され、ターミナルケア(緩和ケア)におけるスピリチュアルに対する論文等がみることが少なかった。 ※なお、本書類ではTerminal Sedationを、苦痛を緩和するために鎮静剤により意識を低下させる医療的方法とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度、ヒアリング調査から人が「寿命に向かって生きる姿」として、「耐え難い苦痛」を「耐えられる」ようにするという捉えられるという視点からTerminal Sedationを実施するかどうかという考え方は、人の生き方として正しいのであるかという結論を述べた。さらに今年度の【研究実績の概要】で述べたが、わが国において現在研究をしている領域に関連する論文は、ほとんど見ることができない。このような結果を踏まえて、アンケート調査に対する緩和ケアに携わる医師よりの助言を踏まえ再検討に費やした時間が大きい。そのため当初の予定より研究の進度が遅れている。 しかしながら、平成26年度から郷堀ヨゼフ氏(研究支援者)の協力により、平成27年度は、当初、予定していた調査の実施、加えて同様の調査をチェコで実施の予定している。 これらのことから現在までの達成度を上のように評価した。この評価を踏まえて、次の項目の【今後の研究の推進方策 等】にこれまでの実施状況を踏まえて計画を修正し平成28年度に研究計画予定を記載した。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの達成度】で述べたが、当初の研究目的を達成するために、①予定している緩和ケアに関わる医師へのアンケート実施(6月発送予定)、その結果を踏まえてのヒアリング調査(今年度後期)、チャプレンやビハーラ僧へのヒアリング調査(今年度後期)の実施状況により法曹関係者への聞き取りの調整を行う。加えて国内で予定しているアンケート調査とほぼ同様の内容でチェコでの調査を予定(9月上旬から中旬)している。 チェコの緩和ケアの状況をわが国の緩和ケアのそれと比較対象として選択した理由は、2004年には死や死にゆくプロセスについて全国規模で、複数の対象にわたる調査がなされ、日本で紹介されているものとチェコ、欧州調査の結果とでは多少の食い違いがあるように思われる。死に対する考え方や宗教的な・文化的な意味合いが希薄化している結果が出ている。(日本国内で報告されている結果とは異なる。)わが国でのターミナルケアにおいても同様の課題があり、比較対象として判断をした。 なお、チェコ国における緩和ケアは、1990年代から活発な活動が行われはじめ、 (ホスピス運動と重なる部分もある)、1998年には緩和ケアという医学部教科書の初版が出版された。2004年には「緩和ケア専門医」が法律に盛り込まれ、2008年にチェコ共和国緩和ケア協会が設立、2011年には緩和ケア研究所が創立された。 現在、国内の緩和ケア病棟への調査とほぼ同様の内容で、チェコ国で調査できるように調整中である。日程としては2015年9月上旬を予定している。 研究支援者に崇徳大学設立準備委員会事務局・講師 郷堀ヨゼフ氏に依頼し国内調査及びチェコ国での調査の協力を依頼し準備をしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
【現在までの達成度】および【今後の研究推進方法】で述べてきたが、当初予定していた緩和ケア病棟へのアンケート調査の内容の修正及び調査対象者の再考により、実施が延期されそのために計画されてきた予算の執行ができなかった。しかし、ヒアリング調査により課題がより明確になっていること、先行研究の探索をから成果が得られている。
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次年度使用額の使用計画 |
アンケート調査内容の準備、対象者の再考は、ほぼ9割方終了している。最終的な確認をして実施する。さらに同様の内容の調査をチェコで実施する予定である。また法曹関係者へのヒアリング調査は、対象の再考が必要であり、かつ調査結果及び期間を踏まえて、1年間の研究計画の延長を含め今後研究を遂行する。
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