研究課題/領域番号 |
25670248
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
飯塚 成志 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30222821)
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研究分担者 |
鈴木 匡 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20555081)
木村 和哲 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00423848)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 被災地医療 / 防災対策 / お薬手帳 / 被災者健康支援 |
研究実績の概要 |
平成26年度は平成25年度に引き続き、東日本大震災の津波による被災地である岩手県陸前高田市・大船渡市において調査を行い、さらに調査範囲を広げて宮城県石巻市および気仙沼市においても調査を行った。 津波で被災した地域は包括的な計画のもとで大がかりな復興が進んではいるが、被災から4年を経過しても仮設住宅で暮らす住民もまだ多く、また移転した住民が暮らす地域も街としての機能が戻っていない。以前親しかった人たちとでさえ、人間的な深い信頼関係を取り戻すことができないという事例が多数見いだされた。心理的な苦しい状態を訴えたいが、お互いに同じような状況を抱えていることを知っているため逆に話すことができないという理由があり、暫定的で不安定な生活環境の中で長期にわたり生活していることが状況を悪化させている。一方復興がまったく手つかずの地域も見られ、その地域の存在自体が精神的に立ち直ることができない要因となっている実例もあった。 成人については健康意識や医療機関への被災による行動変容として目立った項目は見いだされなかったが、上述の精神的な問題のケアの必要性は明らかである。なお、被災地における小児の齲蝕と肥満の被災後の増加傾向は明白であり、子供たち・親たち双方の心理的な変化を反映していると考えられる。被災後慢性期医療としては、こうした点まで含めた対応策の検討を行う必要がある。 なお調査地域として福島第一原子力発電所事故の避難地域も含めることを検討し、予備的な調査を行った。避難解除が準備されている地域であるが、一見したところ変わらない街並みがありながら、さまざまな生活する上での機能を失っており、津波被害地域とは異なる困難な状況があった。こうした地域において必要とされる医療についても検討が必要と考えられれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年2月、3月に被災地において処方薬認識度調査を予定し、医療機関にお願いをしていたが、インフルエンザの流行のために院内への不急の立ち入りが憚られる状況であり、医療機関受診者への聞き取り調査を断念した。さらに研究代表者飯塚の所属大学が異動となり、調査にかかわるさまざまな手続き的な問題が発生している。予定された計画はひとつひとつ実行しているものの、遅れが生じていることは認めざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画からの遅れはあるが、予定通り実施する。研究実績概要欄に記載の通り、被災した児童に特有の疾患がみられること、および精神的なサポートの難しさなども浮き彫りになり、この観点からも研究を広げることが可能かどうか検討したい。さらに平成27年度については、福島第一原子力発電所事故の避難解除地域における調査も並行して行うことを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度の調査が悪天候により、また平成26年度の調査はインフルエンザ流行により、被災地医療機関での調査ができなかった。一方平成27年度については遅れている調査計画を実施する他、津波被災地域での調査範囲を広げ、また津波による被災だけでなく原子力発電所事故避難地域での調査も検討しているため、調査の所要額が大幅に増加した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年夏に岩手県・宮城県の被災地域での調査、および冬に同地域および福島第一原子力発電所南部の地域での調査を追加予定である。
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