研究課題/領域番号 |
25670254
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
山内 圭子 久留米大学, 医学部, 助教 (50304514)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 早期乳癌 / 治療に関する意思決定 / フォーカス・グループ・インタビュー |
研究実績の概要 |
去年度の本研究結果は、早期乳癌に罹患した女性が乳癌治療に関する意思決定プロセスに参加する要因の一つが「有職者であるか否か」であることを示唆した。そこで、職業形態が異なる早期乳癌の治療を受けた女性を対象としたフォーカス・グループ・インタビューを行った。参加者はそれまでに乳癌の治療に関して意思決定を行ったと思える体験及びそのプロセスにおいて仕事がどのように影響したか、また乳癌罹患が仕事に与えた影響を自由に語った。去年度の結果は東京都で実施したインタビューによるものであったので、今年度は、東京でのインタビュー(参加者6人)に加えて、地方都市である福岡市近郊在住者を対象としたインタビューを福岡市で2回実施した(1回目参加者4人、2回目参加者5人)。インタビューの結果は、(1)日本人女性は医師に治療の決定を委ねる傾向が強いというこれまでの発表と反対に、オーダーメイド医療を強く求め、最終決定は自分で行ったと認識している、(2)乳癌の治療に関する意思決定プロセスには有職者であるか否かに加えて、地域差、罹患年齢が関係している、(3)治療に関する意思決定を自分で行ったと認識している女性は、心理的サポートを医師に求める傾向は低く、自分の癌のタイプに効く薬というようなオーダーメイドの情報を求めていることを示唆した。
フォーカス・グループ・インタビューから抽出された乳癌治療に関する意思決定プロセスの因子を量的に明らかにするために調査票を作成した。作成した調査票をこれまでのフォーカス・グループ・インタビュー参加者で試用した。調査はインターネット回答方式で行った。結果は、「医師が示したいくつかの治療法に関する説明をどれくらい理解したか」の回答から予想される乳癌治療に関する知識量と医師に心理的なサポートを求める程度、さらに医師に治療の決定を委ねる程度に関連が無い事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東京都で実施したフォーカス・グループ・インタビューの結果は、早期乳癌に罹患した女性が乳癌治療に関する意思決定に積極的に参加しており、その重要な決定要因の一つが「有職者であるか否か」であることを示唆していた。そのことを他の地域で確認するために、福岡市で同様のインタビューを実施した結果、4人の参加者全員が乳癌治療に関する意思決定に全く参加しなかったと発言した。また、4人ともにインタビュー時、専業主婦であった。福岡で実施したインタビューの結果が、「有職者であるか否か」で説明できるものなのか、それとも乳癌治療に関する意思決定プロセスへの参加に「地域差」があるのかを確認するために、福岡付近在住、早期乳癌の罹患者、有職者の条件でフォーカス・グループ・インタビューを計画した。対象者の選定条件が厳しく、リクルートに予定よりも時間が必要となりインタビューの実施が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
1)"Perceived Efficacy in Patient-Physician Interactions Questionaire"の翻訳、再翻訳を行い、フォーカス・グループ・インタビューの結果を基に作成した調査票に追加する。 2)(研究計画の変更部分)調査会社を介して、乳癌罹患女性を対象に量的調査を行う。調査票は1)で作成したものを使用し、インターネット回答方式で行う。当初は、がん患者の家族会等に手紙、あるいは出向いて調査協力のお願いをし、調査協力に同意した団体に調査票を送る予定であったが、家族会等へのアクセスが難しく、インタビュー対象者のリクルートが難航したことから、量的調査の対象者リクルートを調査会社に依頼することとした。また、調査方法は自記式質問調査の予定であったが、回答の容易さと結果集計の効率性を考え、インターネット回答方式に変更する。 3)早期乳がんの治療を受けた女性を対象に行ったフォーカス・グループ・インタビューの結果、早期乳がんの治療を受けた女性を配偶者に持つ男性を対象に行ったフォーカス・グループ・インタビューの結果及び2)で行うアンケート調査の結果をもとに、早期乳癌患者の治療に関する意思決定を改善あるいは向上を促すマニュアルを作成する。 4)3)で作成したマニュアルの検討を行う。検討は、早期乳がんの治療を受けた女性を対象にしたフォーカス・グループ・インタビューで行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビュー対象者のリクルートに予定より時間がかかり、実施が遅れ、謝金及びリクルート費用の調査会社への支払いが来年度に持ち越されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度に実施したインタビューの謝金及びリクルート費用の支払いに使用する。
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