研究課題
挑戦的萌芽研究
人工多能性幹細胞から分化・培養された細胞を、疾患治療に利用する環境が整備されつつある。その一方で、治療目的に投与される細胞の機能や生体内運命については、その最適化が不十分である。本研究では、治療目的に投与する細胞(機能細胞)を「補助細胞」と共に混合型細胞スフェロイドとすることで、機能細胞が本来有する機能を最大限に引き出すとともに、生体投与後の機能細胞の生着率の向上・作用発現期間の延長を図る。平成25年度は、機能細胞としてインスリン分泌活性を有するマウスインスリノーマMIN6を選択し、これに補助細胞としてマウス血管内皮細胞株MAECまたはマウス線維芽細胞株NIH3T3のいずれかを混合することで混合型細胞スフェロイドを作製し、その機能評価を行った。MIN6細胞と補助細胞との混合懸濁液を直径の異なるポリジメチルシロキサン製マイクロウェルに添加し、振盪培養することで混合型細胞スフェロイドを作製した。その結果、マイクロウェルのサイズに対応した直径の細胞スフェロイドが得られた。MIN6細胞をCSFEで、補助細胞をDiIで蛍光標識して混合型細胞スフェロイドを作製したところ、一つのスフェロイド中に両細胞が分散して存在することが確認された。MIN6細胞でのIns-1、Ins-2のmRNA発現は、補助細胞との混合型細胞スフェロイドとすることで有意に上昇した。同様に、混合型細胞スフェロイドからは、有意に高いインスリン分泌が認められた。
2: おおむね順調に進展している
計画していた内容をほぼ予定通りに遂行した。予備検討の結果から、検討には400μmのマイクロウェルを用いて作成した細胞スフェロイドでの評価を行うこととした。
今後は、作製に成功した混合型MIN6細胞スフェロイドを利用したI型糖尿病治療について検討する。糖尿病モデルマウスでの効果の判定には、経時的に測定する血糖値に加えて、グルコース負荷試験の結果を用いる。また、血中インスリンレベルの測定ならびに移植した細胞スフェロイドの残存を測定することで、移植した細胞スフェロイドの生存ならびに機能を経時的に評価する。また、投与経路・投与方法の最適化を目的とした検討も行う。別途、細胞皮膚損傷治療効果がある骨髄細胞に関しても、これを機能細胞とする混合型細胞スフェロイドの作製ならびに機能評価に加えて、皮膚欠損モデルマウスでの治療効果を判定する。以上の検討を通じ、混合型細胞スフェロイドの開発することで高機能微小組織移植治療システムの実現を目指す。
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