関節リウマチにおいて,滑膜増殖に伴う間接的な関節の機能障害が関節リウマチの予後に大きく関わることから,滑膜増殖を抑制することが有用と考えられる.しかしながら,臨床においては,滑膜増殖抑制を作用機序とする治療法は確立されておらず,対症療法を目的とした化学療法が主となっている.本課題では,この滑膜細胞の異常な増殖に対して,有用な阻害作用を開発することを目的とした.その滑膜増殖では,血管新生の誘導が必須であることが報告されている.また,実験動物を用いた基礎研究では,血管新生阻害剤で関節リウマチおける滑膜細胞の増殖抑制が報告されている.そのメカニズムは,増殖する細胞への栄養や酸素の供給を阻害することで,兵糧攻めの機序により,細胞の増殖が抑制されると考えられている.このように,新生血管の阻害は効果的であるが,近年,関節リウマチの滑膜と同様に,組織の増殖を病理の特徴とするがんでは,新生血管以外に,新たな栄養や酸素の供給源となる脈管として,血管内皮細胞ではなく異常に増殖する細胞自らが形成した擬似血管が報告されている.この擬似血管は増殖初期に関与していると考えられており,擬似血管の阻害が,早期に異常増殖を抑制すると考えた.そこで,関節リウマチにおいても擬似血管が存在するのかをヒト組織で検討した結果,擬似血管を有する可能性が示されたため,関節リウマチの擬似血管を阻害する治療法の開発を検討した.まず,関節リウマチモデルマウスを作成し,ヒトと同様に,増殖滑膜部位に擬似血管が形成されることが示唆される結果を得た.次に,滑膜細胞を採取し,in vitroで管腔形成させた後,ファージディスプレイ法で増殖滑膜細胞特異的な抗体を得たのち,擬似血管阻害作用をメカニズムとした新規治療法を検討する予定であったが,有用な治療法の開発には至らなかった
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