研究課題
挑戦的萌芽研究
多戦略的翻訳後修飾モディフィコミクスによる肝胆膵早期がんの血中自己抗体の探索を行うにあたり、初年度は先ず翻訳後修飾の代表格といえる糖鎖修飾を取り上げ、病態の経時的変化が確認されているモデル試料を用いて方法論のチェックを行った。アルコール依存症患者、断酒前後の経時的採血が行われているアルコール性肝硬変患者、年齢をマッチさせた健常対照、非アルコール性肝障害患者の血清試料を対象とした。プロテオーム解析は一般的にgel-basedとMS-basedに分類されるが、今回はより詳細な解析を行うために、両者を組み合わせたGeLC-MS法を用いることとした。血清からWGA (Wheat Germ Agglutinin) がコートされたマグネットビーズでN型糖鎖付加タンパク質を抽出した後、各サンプルを安定同位体標識試薬TMT (Tandem Mass Tag; Thermo Scientific社)で標識した。標識したサンプルを混合しSDS-PAGE を行い、CBB染色後のゲルから分子量ごとにトリプシンによるゲル内消化を行い、酵素消化したサンプルはLC-MS/MS測定後、データベース検索を行い、タンパク質同定及び比較定量を同時に行った。その結果アルコール性肝硬変症例の断酒前後で有意な変化を示した蛋白質が17種類検出同定された。この中にはこれまでにアルコール性肝障害との関連が知られていない蛋白質も含まれている。現在、アルコール性肝障害の重症度を反映するか、飲酒習慣の程度と関連するか、すなわち習慣飲酒マーカーとなり得るかについて検討している。
2: おおむね順調に進展している
蛋白質の翻訳後修飾は糖鎖修飾、リン酸化、ユビキチン化など数多いが、最も頻度が多い糖鎖修飾蛋白質網羅的解析について方法論を確認することができた。次年度に向けて各種固形がん患者の血清試料の収集も順調に進んでいる。
糖鎖修飾だけでなく、リン酸化および近年その多様な機能が注目されているユビキチン化に焦点をあてて、癌化の初期における翻訳後修飾を網羅的探索により捉え、その変化に対する生体の免疫応答(自己抗体の産生)を固形癌の超早期診断に応用することを進める。初年度で用いた糖鎖修飾解析手法の固形がん患者試料への応用も並行してすすめ、難治性消化器がんの新しい早期診断バイオマーカーの開発を目指す。
予定していたいくつかの試薬を購入せずにすんだため。最終年度となるため、成果発表費用(論文校正費用および学会での発表費用)として活用したいと考えている。
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