研究課題
多戦略的翻訳後修飾モディフィコミクスによる肝胆膵早期がんの血中自己抗体の探索を行うにあたり、昨年度は先ず翻訳後修飾の代表格といえる糖鎖修飾を取り上げ、病態の経時的変化が確認されているモデル動物を用いて方法論のチェックを行った。その結果、アルコール性肝硬変患者で特異的に見いだされる蛋白質を複数同定したが、今年度は先ずこれらの蛋白質のうちMAT2Bを取り上げ、この蛋白質が肝障害の程度を表すマーカーであるのか、あるいは飲酒習慣を反映するのか、を検討した結果、MAT2Bの血清レベル変動はアルコール性肝障害重症度や進行度に規定されるのではなく、一定量を超える飲酒習慣により上昇することがあきらかとなり、新しい飲酒マーカーとなりうることが示された。興味深いことに、MAT2Bの変化は従来の飲酒マーカーであるγ―GTやCDTの変化が見られない個体でも認められたので、従来の飲酒マーカーのいわゆるノンリスポンダーの検出に役立つ可能性がある。モディフイコミクスによる肝胆膵早期がんの血中自己抗体の探索においてはタンパクレベルで発現量が変化する蛋白質の探索と翻訳後修飾をあわせて解析するモディフィコプロテオミクスによるアプローチが必要であるが、従来の手法による比較プロテオーム解析では膵癌の決定的なマーカーが見いだされていない。そこで、今回新たに安定同位体アミノ酸標識法(SILAC法)を用いて定量的プロテオーム解析を行った結果、膵癌特異的に発現変化が見られる蛋白質を複数同定した。いくつかのタンパク質は免疫組織染色においても非癌部より癌部で高発現していた。一方、培養上清の解析においては特に抗がん剤ゲムシタビン耐性株において野生株よりも高い蓄積量を示すタンパク質が検出された。今後これらの蛋白質およびその翻訳後修飾物に対する血中自己抗体が膵癌患者血清中で検出されるかどうかを検討する予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件)
Biochim Biophys Acta.
巻: 1854 ページ: 528-37
doi:10.1016/j.bbapap.2014.10.022
Neurology.
巻: 83 ページ: 113-7
doi: 10.1212/WNL.0000000000000566.
PLoS One.
巻: 9 ページ: e85356
doi: 10.1371/journal.pone.0085356
アルコールと医学生物学
巻: 33 ページ: 50-5