研究課題
挑戦的萌芽研究
病因を問わずあらゆる腎臓病において、蛋白尿は腎機能低下、全死亡率ならびに心血管系死亡率と密接に関連する。そのため、蛋白尿の出現機序に関連する分子の同定、その診断・治療反応性・予後を反映するバイオマーカー確立は腎臓病の予後改善にむけて重要な課題である。しかしながら、蛋白尿を惹起する透過性因子はいまだ国際的に明らかではない。本研究の目的は、オミクス技術を用いてネフローゼ症候群患者の血清中における糸球体透過性制御因子の探索を行うことである。このことにより、腎生検による侵襲的な検査によったこれまでの腎臓病の診断が新規の臨床検査診断法開発につながる可能性がある。さらに、蛋白尿をきたす糸球体障害の質的診断に加えて、透過性因子測定により、治療効果判定やネフローゼ症候群の予後を明らかにできる可能性がある。これまでの検討により、特発性ネフローゼ症候群のうち、巣状分節性糸球体硬化症および微小変化型ネフローゼ症候群の蛋白尿の出現、病勢と相関性の高い因子を抽出している。このうち、用いたチップで検出された血清中のペプチド発現と上記臨床パラメータとの相関を検討したところ、相関係数0.8以上を呈したペチドが数個みられた。興味深いことに、蛋白尿との相関係数-0.8以下、すなわち蛋白尿と逆相関するペプチドもみられた。これらのペプチドと臨床的な蛋白尿の極期、寛解時の変化との相関が強いものを選択し、その解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
本研究では3つの特徴的なアイデアが盛り込まれている。①白血球除去療法や移植後再発例に対するリツキシマブで寛解に至り、蛋白尿惹起因子の存在が強く疑われる症例を対象としていること、②プロテオミクス解析とトランスクリプトーム解析の二重評価などオミクス解析に工夫をしていること、③対象となるペプチドの分子量設定の工夫をしていることである。実際、これらの利点をふまえて、白血球除去療法などで改善した症例からの蛋白尿惹起因子の解析が進んでいる。トランスクリプトーム解析技術、その結果を理解するバイオインフォマティクス技術も確立しつつある。今後、プロテオミクスとトランスクリプトーム組み合わせによるオミクス解析ならびにインフォマティクスの工夫から新規分子の同定を進めていきたいと考えている。これにより、臨床的に蛋白尿が予後とかかわる腎臓病、ことにネフローゼ症候群などの症の診断、予後ならびに治療反応性の判定に用い、診断と治療の水準向上につなげたいと考えている。
候補蛋白に関して、クロマト分画を還元状態とした後にプロテアーゼ消化による断片化を行いプロテインチップMS/MS(インターフェイス使用)を行う。そのうえで、Mascotでのデータベース検索によるアミノ酸配列解析を行う予定である。あわせて、新規の蛋白候補も並行して検討する予定にしている。また、次世代シーケンサーにより候補蛋白の遺伝子発現との相関も検討し始めている。このように、候補蛋白の精製を進めるとともに、同じ患者の白血球によるトランスクリプトーム解析により既知蛋白の発現を裏付け、絞り込むことを予定する。これらの標的因子の同定・絞り込みが終了した時点で、臨床的意義の解析ならびに臨床検査診断法の確立を検討することを予定している。これまでに、既知の蛋白発現により、同じネフローゼ症候群を示す例であっても、背景疾患による鑑別が可能であることを見いだしてきた。このため新規蛋白の同定とともに、パネル化による臨床検査法としての有用性の検証を順次進めていく予定である。最終的に蛋白測定条件を至適化し、新規臨床検査診断法を確立し臨床に還元することを目標とする。さらに、学会等での密接な交流、調査研究、成果発表などを行い本研究を発展させる。
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