研究課題
本研究は、種々の原発性、転移性がんの高感度検出が可能で、かつ低被爆の「抗体PET(Positron Emission Tomography)プローブ」の開発を目的とする。これを実現するため、種々のがん細胞に効率に発現することが知られるがん抗原mesothelin(MSLN)に対する低分子化抗体(single chain variable fragment, scFv)を作製し、サイクロトロンにより製造した89Zrを標識しPETプローブ化することで、そのがんのPET診断における有用性について評価を行った。前年度に引き続き、抗MSLN- scFv抗体を追加作製した。得られたscFv抗体のMSLNに対する結合親和性を分子間相互作用測定装置により測定した結果、解離定数はロットごとに約10-50nMとなり、前年度に作製したscFv抗体(解離定数100nM程度)よりも高い活性を示す抗体が得られた。作製した抗MSLN-scFv抗体に89Zrに対するキレート剤であるDFOを修飾した後、ELISAおよび分子間相互作用測定装置を用いてDFO-抗MSLN-scFv抗体がMSLNに対する親和性を保持することを確認した。サイクロトロンで89Zrを製造・精製した後、得られた89ZrとDFO-抗MSLN-scFv抗体を反応させることで、89Zr標識抗MSLN-scFv抗体を得た。MSLN陽性がん細胞であるNCI-H226細胞(ヒト中皮腫由来)をBALB/c nu/nuマウスに移植して担がんマウスを作成し、89Zr標識抗MSLN-scFv抗体の、担がんマウス投与後の生体内分布をPETイメージングおよび解剖後の臓器放射能測定により調べた。その結果、投与48時間後に最もコントラストが高く腫瘍が描出されるPET画像が得られ、代謝・排泄に関わる腎臓および網内系組織に次いで腫瘍へ高い集積が確認された。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Journal of Immunology Research
巻: 2015 ページ: 1-15
10.1155/2015/268172