研究課題/領域番号 |
25670276
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
山本 惠三 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (90254490)
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研究分担者 |
笠原 敬 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (50405403)
中山 章文 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 准教授 (70536721)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | βーラクタマーゼ / クローニング / 大量発現 / 大腸菌 / 多剤耐性 |
研究概要 |
1.PCRを用いたCTX-M型ESBLsのサブグループの鑑別 - 奈良県立医科大学附属病院で分離された、CTX-M型ESBLを保有する大腸菌の鑑別を行ったところ、CTX-M-9型が最も多く、CTX-M-1型、CTX-M-2型が散見された。 2.大腸菌が保有するCTX-M型ESBLのDNA配列の決定方法の確立 - 奈良県立医科大学附属病院で分離された、CTX-M型ESBLを保有する大腸菌のほとんどは、複数種類のプラスミドを保有することが判明した。そのため形質転換によって、ESBLをコードするプラスミドのみを持つ大腸菌を分離する方法を確立した。さらに、PCRによりサブグループを鑑別する際に使用するプライマーと、その逆鎖の合成プライマーを用いて、ターゲットとなる遺伝子の全配列を決定することに成功した。 3.CTX-M-2型ESBLの高発現化方法の確立 - 高発現化方法を確立する目的で、日本で最もよく研究されているサブグループであるCTX-M-2型ESBLを用いて実験を行った。開始コドンを除く5'末端、及び3'末端の下流にBamHIサイトを付加したプライマーセットを合成し、CTX-M-2型ESBL全遺伝子をPCRにより取得した。これをpET28aのNcoI-BamHIサイト間に挿入して、BL21(DE3)を形質転換した。この菌株を用いて培養条件、及びIPTGによるインダクションの条件の検討を詳細に行ったところ、培養温度20℃、最終濃度0.02mMのIPTGでインダクションを行うことにより、可溶性画分にESBLが大量発現することを見出した。 以上の結果から、大腸菌が保有するCTX-M型ESBLのDNA配列の決定、大腸菌へのクローニング、大腸菌におけるESBLの大量発現までをルーチンで行う方法が確立された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の第1関門は、CTX-M型ESBLのDNA配列決定と可溶性タンパク質の大量発現をいかにルーチンで行うかであり、これが平成25年度の主目的であった。当該年度において、我々は、元株が複数種類保有するプラスミドの中から、ESBLをコードするプラスミドの単離方法を確立したほか、CTX-M型ESBLのDNA配列の決定、大腸菌へのクローニング、大腸菌におけるESBLの大量発現までをルーチンで行う方法を確立できたので、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.高純度のCTX-M型ESBLを精製する方法の確立 ー 結晶化を行うためには、通常10mg/mL程度の高純度タンパク質が10~20mL必要である。この量のタンパク質を効率よく、かつ高純度で精製するする方法を確立する。平成25年度の結果では、予想以上の発現効率でタンパク質が得られるようになったため、陽イオン交換カラムクロマトグラフィーのみでの精製で十分と予想している。 2.CTX-M型ESBLの結晶化条件の検索 - これまでに確立したシステムで精製したタンパク質を用いて、結晶化を行う。結晶化条件の検索には市販の結晶化条件検索キットを用い、タンパク質濃度、結晶化剤濃度、温度等の条件を変えて、数百~数千条件の検索を行う予定である。結晶が得られた場合には、超高分解能のX線回折データを与える結晶を作成するため、結晶化条件のファインチューニングを行う。CTX-M型ESBLサブグループ間のアミノ酸配列の相動性は十分高いため、1種のCTX-M型ESBLで決定された結晶化条件は、微調整のみで他のCTX-M型ESBLにも適用可能と考えている。 1,2に挙げた条件決定と並行して、構造解析に供するCTX-M型ESBLの鑑別を進める。また、基質特異性の拡張に関与すると考えられているアミノ酸がいくつか予想されているので、部位特異的アミノ酸置換を導入して人為的に特異性を拡張したタンパク質を作成して、それらの構造を比較することも視野に入れている。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度に購入する予定であった遺伝子情報処理ソフトウェアについて、バージョンアップの情報を入手したため購入を延期した。そのために次年度使用額が生じたものである。 25年残額(次年度使用額)と26年度使用用定額を合わせて、遺伝子情報処理ソフトウェアと解析用コンピューターを購入して研究を遂行する。さらに、消耗品等については、先に提出した使用計画に合わせて適切に物品の購入を行い、研究を遂行する予定である。
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