研究課題/領域番号 |
25670276
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
山本 惠三 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (90254490)
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研究分担者 |
笠原 敬 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50405403)
中山 章文 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 准教授 (70536721)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | β―ラクタマーゼ / 多剤耐性 / タンパク質精製 / X線結晶構造解析 / 基質特異性 |
研究実績の概要 |
1.高純度のCTX-M-2型ESBLを精製する方法の確立 - 平成25年度において大腸菌においてESBLを大量発現できるようになったので、簡便に精製できる条件を検索した。その結果、20 mM MES pH 6.5で平衡化した陽イオン交換樹脂・CM-Toyopearlを使用し、0-0.2 M NaCl直線勾配で溶出させることにより、1ステップで電気泳動的に単一にまで生成する方法を確立した。最終収量は1L培養当たり、約30mgであった。 2.CTX-M-2型ESBLの結晶化条件の検索 - 精製タンパク質を用い、結晶化条件を1000条件以上検索したところ、0.1 M sodium citrate pH 5.6, 1.9 M ammonium sulfate, 0.2 M potassium sodium tartrateを沈殿剤として結晶化すると、0.1mm角のbi-pyramidal型結晶が得られた。この結晶を用いて、SPring-8においてX線回折データの収集を行った。その結果、分解能1.3Å、空間群P32、格子定数a=72.49, b=72.49, c=97.48の非常に良好な反射データが得られた。 3.基質特異性に関与するアミノ酸の抽出 - アミノ酸配列、及び、構造相同性の網羅的検索により、基質特異性に関与するアミノ酸の候補を検索した。その結果、活性が拡張されるためには、ループ部分の柔軟性の変化が関与していることが示唆された。特に、 VNYNPループ、及び、活性部位の上部に位置するα/βドメインをつなぐループが重要である。そこで、活性部位の上部に位置するα/βドメインをつなぐループにおいて、もっとも影響を及ぼすと考えられるAla219について、ループの動きを制限する目的で、Val, Leuのアミノ酸置換を導入した。これらの変異型酵素についても大腸菌内で高発現することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
精製条件の決定において、大腸菌破砕液の状態では陽イオン交換樹脂に目的タンパク質が結合しないという現象がみられた。そのため、緩衝液の種類、濃度、pH等の精製条件を最適化するのに時間を要した。 結晶化条件の検索において、X線回折データが測定できる程度の大きさに結晶が成長するためには、約1カ月を要した。そのため、結晶化条件の最適化に時間を要した。 以上の理由により、平成26年度の達成度は少し遅れていると判断した。しかしながら、当該年度において、短時間で大量の精製タンパク質を得る手法、及び結晶化条件の決定が行えたこと、非常に良好なX線回折データが得られたこと、及び変異型酵素の大腸菌内での高発現が行えたことから、平成27年度は計画通りに研究を遂行できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
活性部位の上部に位置するα/βドメインをつなぐループの重要性を構造学的に解明するため、Ala219に対して、ループの柔軟性を下げるような一連のアミノ酸置換を導入した変異型酵素を作成する。作成した変異型酵素はこれまでに確立した手法を用いて結晶化し、構造解析を行う。得られた構造の比較、及び様々な抗生物質をドッキングさせたコンピュータシュミレーションを行い、基質特異性の拡張機構を解明する。 また、VNYNPループとよばれる部分へのアミノ酸置換は、基質特異性に影響を与えるとされているが、なぜ影響を与えるのかは全く解明されていない。そこでこの部分についてもアミノ酸置換を導入し、なぜ基質特異性に影響を与えるのかを構造学的に解明する。 CTX-M-2では1.3Åという超高分解能のデータが得られているため、原子レベルでの議論が期待できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に購入予定であった、遺伝子解析ソフトウェアのバージョンアップが、Windows10のリリースが発表されたため延期されている。そのため、購入を見合わせた。 また、実験に使用している薬用冷蔵ショーケースが製造後35年を経過し、経年劣化で不調となったために急遽購入を検討したものの、年度末迄に購入決定ができなかった。以上の理由のために次年度使用額が生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
26年度残額(次年度使用額)と27年度使用予定額を併せて、遺伝子解析ソフトウェアと薬用冷蔵ショーケースを購入して研究を遂行する。さらに消耗品等については、先に提出した使用計画に合わせて適切に物品の購入を行い、研究を遂行する予定である。 また、今年度は放射光施設を用いたデータ収集の回数が多くなることが見込まれることと、論文発表のための英文校正費の出費が予定されているため、旅費、人件費・謝金についても適切な予算執行を行う。
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