研究実績の概要 |
前年度の研究より、活性が拡張されるためにはループ部分の構造の柔軟性が重要であることが示唆された。そこで、活性部位の上部に位置し、α/βドメインをつなぐループにおいて柔軟性に影響を与えると考えられるAla219について、柔軟性が低下すると考えられる一連のアミノ酸置換、A219V, A219L, A219Fを導入した変異型酵素を作成し、大腸菌より精製した。 これらの酵素について結晶化条件を検索した結果、タンパク質濃度20 mg/mL、①1.9 M ammonium sulfate, 0.1 M sodium citrate pH 5.6, 0.2 M potassium sodium tartrate (native, A219V, A219F), ②10% PEG200, 0.1 M bis-Tris propane pH 9.0, 17% PEG8000 (A219L)の条件で、約0.1 mm角の良好な結晶が得られた。得られた結晶を用いて、SPring-8のBL44XUにおいて単結晶X線回折データを収集した。A219Vは分解能1.3Å、空間群P3221、A219Lは分解能1.7Å、空間群P212121、A219Fは分解能1.7Å、空間群P3221という結果を得た。 すでに構造が決定されているToho-1の構造を初期モデルとした用いた分子置換法により、野生型CTX-M-2、A219V, A219L, A219Fの構造を決定し互いに比較したところ、野生型に対して、A219V, A219Fの主鎖の構造変化はr.m.s.d=0.1Å程度と微小であったが、A219Lの構造変化はr.m.s.d=0.5Å、最大4.2Åと大きいことがわかった。このことから、CTX型β-ラクタマーゼでは、ループ部分に生じたアミノ酸置換が全体の構造に大きな変化を及ぼし、活性に影響を与えることが示唆された。
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