研究課題/領域番号 |
25670278
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
中村 眞二 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40207882)
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研究分担者 |
松尾 淳司 北海道大学, 保健科学研究院, 講師 (50359486)
石津 明洋 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (60321957)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Chlamydia trachomatis / IL-1 / IL-1レセプターアンタゴニスト / 炎症性メディエーター / 感染症 / 診断マーカー |
研究概要 |
細胞内寄生性細菌クラミジア(Chlamydia trachomatis)は,健康女性の約10%程度の膣頸管部に感染が見られる性感染症の最もポプュラーな原因である.このクラミジアを無治療・放置すると,一部の女性では骨盤内感染症(PID)が起こり,卵管や卵巣組織の繊維化を伴う卵管閉塞や子宮外妊娠のリスクが高まることが古くから知られている.何故一部の女性でのみ難治化が起こるのだろうか.またクラミジア感染症の難治化は予想できないのだろうか.IL-1の過剰産生はIL-6やPGE2を介して繊維芽細胞を組織へ浸潤・増殖させ繊維化を起こすが,IL-1レセプターアンタゴニスト(IL-1Ra)によって強力に抑制制御されている.クラミジア感染に伴い慢性疾患に移行し易い女性ではIL-1とIL-1Raの発現バランスは維持されているのだろうか.そこで実際のクラミジア感染患者生殖器粘膜面でのIL-1とIL-1Raのバランスシートを主に病理学的視点より解析し,クラミジア感染症の難治化予測診断マーカーの探索を試みた.本年度はパピローマウイルス検診後残余パラフィンブロック標本からのクラミジア陽性標本のスクリーニング及び感染細胞とIL-1(αやβ)・IL-1Raなど炎症性メディエーターの検出を行った.その結果,クラミジア感染細胞は子宮頚部の扁平上皮や腺上皮の一部にも認められた.また間質に浸潤したリンパ球(未確認)などの細胞にも多数観察された.クラミジア感染細胞が広く認められた検体では,扁平上皮や腺上皮,間質の浸潤細胞にL-1IL-1αとL-1βの強い発現を認めた.この結果は,これから検索を進めるIL-1RaとIL-1とのバランスシートの乱れの有無を検証するうえで,重要な所見である.今後更に症例を増やし,クラミジア感染症の難治化のマーカーの確立を目差し実験計画を進めていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
『クラミジア感染症の難治化予測診断マーカー』の免疫組織化学的および分子生物学的検索に用いる婦人科検体からのパラフィン切片の作製は,北海道大学の研究分担者らの担当であったが,平成25年に入り分担者らの校舎の耐震工事のため,一時的な実験室の移転を強いられ,事前に予想したよりも移転先のスペースが取れなかったことから,パラフィン切片作製の環境が整わず切片作製が出来ない状況にある,また,東京と北海道と地理的に離れている研究代表者と分担者との連絡も十分に取れなかったことも重なり,早急な対策を打てず過ぎてしまい,現在も免疫組織化学的および分子生物学的検索に遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策については,以下の通りである. 1.現在遅れている,婦人科のパラフィンブロックを用いた,クラミジア及び炎症性メディエーター(IM)の免疫組織化学的検討とIM発現の網羅的解析を早急に進めるため,必要ならば研究代表者も北海道大学に出向いて実験を遂行することも含めて積極的に関わって遂行する. 2.非淋菌性尿道炎尿検体からのクラミジア遺伝子とIL-1(αやβ)・IL-1Ra・IL-6・PGE2抗原の検索:クラミジア感染時のIL-1RaとIL-1のバランスシートの乱れは,実際の臨床の現場で非侵襲的検査のメルクマールになるか否かを確認するため,クラミジア感染が疑われる非淋菌性尿道炎症例の尿沈渣からPCRでクラミジア遺伝子検索と同時に,上清からは炎症性メディエーター[IL-1(αやβ)・IL-1Ra・IL-6・PGE2]を抗原レベルで検討する.更にクラミジア陽性患者の陰転化と炎症性メディエーターの検出量との関連性についても経時的にモニタリングし,感染の遷延化を助長する因子を模索する. 3.IL-1Raがクラミジアのヒト株化細胞内での増殖に与える影響の検討:炎症性メディエーターの沈静化に極めて重要な役割を演じている考えられるIL-1Raが,クラミジアの細胞内での生存・増殖にはどのような影響を与えるかはまだ不明である.そこでIL-1Ra存在下で培養したクラミジア感染マクロファージ内でのインフラマソーム,カスパーゼ1,S1P,S2P,SREBPの細胞内での局在変化を特異的な抗体を用いて可視化検討する.更に膜の生合成を介してクラミジアへの脂質の供給に直接関わると予想されるSREBPを強制的に発現した細胞をもちいて,IL-1Raの存在がSREBPのERからゴルジ体への移行や物理的細胞ストレスからの回避にどのような影響を及ぼすか検討を加える.
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次年度の研究費の使用計画 |
『クラミジア感染症の難治化予測診断マーカー』の免疫組織化学的および分子生物学的検索に用いる婦人科検体からのパラフィン切片の作製は,北海道大学の研究分担者らの担当であったが,平成25年に入り分担者らの校舎の耐震工事のため,一時的な実験室の移転を強いられ,事前に予想したよりも移転先のスペースが取れなかったこともあり,パラフィン切片作製の環境が整備されない状況が続いており,H25年度の実験は,これらパラフィン切片を用いた免疫組織化学的および分子生物学的検索だったために,その実験に使用する試薬類の支出が減額になり,次年度使用金額が生じてしまった. 遅れているパラフィン切片を用いた免疫組織化学的および分子生物学的検索は,H26年度も継続するため,遅れていたH25年度の検体分をH26年度分に追加して実験を進めるので,その為の試薬類の支出も予定より増額するため,その増額分に,今回の次年度使用金額を当てて使用する.
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