研究実績の概要 |
抗体は、特定の抗原の化学構造を認識する分析試薬として重用されるが、VHとVLの2つのドメインの会合が必要なうえ分子量が大きく大腸菌内での発現量も低い。この点を克服するため、抗体のH鎖可変部ドメイン (VH) または単量体化したストレプトアビジンstav (stav´) を基本構造とし、様々なハプテン結合能を示す低分子量機能性ドメイン群の創製を試みた。昨年までの検討で、VHを基本構造とするアプローチは困難と判断されたため、今年度はstav´を基本構造とするアプローチに絞って検討を行った。stav´は8つのβシート構造を持つが、in silico分子モデリングの結果、これらを連結する7つのループ構造のうち 3つ (ループA, B, C) がハプテンと相互作用するものと期待された。これらループにランダム変異 (連続する3つのアミノ酸残基をランダム化) を導入したライブラリーを作製し、コルチゾール (CS) とエストラジオール (E2) に対する結合能を獲得した分子種の探索を試みた。結合能の評価は、ELISA (ステロイド-BSA結合体あるいはBSAを固定化したプレートとの結合能をシグナル化する) により行った。E2については、昨年、ループA、ついでループBに順次変異を導入して、E2-BSA/BSA比が3.1、4.1のクローンを得ている。本年度、さらにループCに変異を導入して、より大きなE2-BSA/BSA比 (6.1) のクローンを単離した。この結果は、変異点の追加により、E2の認識能・結合能が向上したものと解釈することができる。他方、CSについては、昨年CS-BSA/BSA比が10.5、7.9のクローンを得た。今年度、上記のE2と同様の実験を行ったが、CS結合能をさらに改善するには至らなかった。
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