研究課題/領域番号 |
25670281
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
芝崎 太 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 参事研究員 (90300954)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 筋萎縮 / サルコペニア / 高感度測定 / イムノPCR / 診断 / 骨格筋 / バイオマーカー / 加齢 |
研究実績の概要 |
介護予防や臨床の現場では、特に加齢性筋肉減少症(サルコペニア)において、筋力、筋量、運動能力の測定、聞き取りによる日常活動のスコアーを用いて診断を行っている。ただ、これらの方法は有効性が乏しく、筋萎縮が進むと不可逆性の筋の変化を早期に発見し、筋萎縮の予防・治療を可能にすることが急務である。本申請において、共同研究者の重本等は、サルコペニアに特異的なバイオマーカー(A蛋白とする)を発見し、詳細な研究を行った結果、①マウス神経筋シナプスの形態縮小・機能低下が進行中のマウスにおいてmRNA発現量が上昇していること、②ギブス固定拘束による廃用性筋萎縮に対する機能回復訓練を、患者20名に対して行った。血中のA蛋白レベルと骨格筋の状態(量、機能)との間に正の相関が認め、A蛋白が骨格筋の状態を把握するためのバイオマーカーとして利用できることを見出した。これらの結果より、血液中のA蛋白を測定するため、申請者等が開発した高感度同時多項目測定(MUSTag)法を用いて、測定法の開発を行った。これまでの結果として、(1)A蛋白に特異的に反応するペアーの抗体を決定。(2)改良MUSTag法によるアッセイ法の最適条件を決定した。MUSTag法にて述べ2,000例以上の患者サンプルでの検定を行った。これらの結果から対象患者の血中A蛋白量は、骨格筋量が多く同化作用が促進する(anabolic)環境では値が増加し、一方、代謝の亢進、炎症といった異化作用が促進する(catabolic)環境では値が減少する可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究ではこれまでに、(地独)東京都健康長寿医療センターが保有するのべ2,000検体分以上のサンプルを用いてMUSTag法によるA蛋白量を測定した。当初目標であったA蛋白量とサルコペニアの筋肉量が相関することやリハビリ後の効果を反映するかどうかの評価は終了し、私達が仮定していた内容がほぼ証明された。昨年よりIL-2、TNF-alpha、TGF-beta等のサイトカイン測定による多項目検定での精度向上を目指した。現在まだこれらのサイトカインの測定を継続しており、当初の予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本申請で進めるべきサイトカイン等の測定に関しては、まだ、評価できる検体数にいたっておらず、担当の研究者が退職したこともあり、別の研究者によるMUSTagアッセイ系に時間がかかっている。本年度は最終的な結論を出すべく、総合的に確実にサルコペニアやリハビリ後の指標となるバイオマーカーの組み合わせを決定するお目標にしている。これらの結果から、本A蛋白量の変化と代謝や炎症などのとの関連の有無に関してさらに詳しい解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、1,000例近くのヒトサンプルでのサイトカイン測定を計画していたが、担当研究員の退職により研究が滞り、計画通りのアッセイができなかった。新しい研究員の補充が進まず、別の研究員へのテーマの引き継ぎなどで大幅に研究計画に遅れが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、研究補助員への研究テーマの引き継ぎを行い、アッセイ系のトレーニング、等を行っており、繰り越し金額、603,308円はサイトカインアッセイ系などの構築に伴う抗体の購入、MUSTagアッセイ系の試薬(生化学的試薬およびPCR用試薬)の購入に充てると共に、研究補助員の謝金等に当てる予定である。当初計画していた1,000例以上のサンプル数を最小限に縮小する予定である。
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