研究実績の概要 |
サルコペニアは認知症と並び要介護の2大要因であり、筋萎縮が進むと不可逆性の筋の変化を早期に発見し、筋萎縮の予防・治療を可能にすることが急務である。本申請において、共同研究者の重本等は、サルコペニアに特異的なバイオマーカー(A蛋白とする)を発見し、詳細な研究を行った結果、①マウス神経筋シナプスの形態縮小・機能低下が進行中のマウスにおいてmRNA発現量が上昇していること、②ギブス固定拘束による廃用性筋萎縮に対する機能回復訓練を行った患者20名に対して、血中のA蛋白レベルと骨格筋の状態(量、機能)との間に正の相関が認め、A蛋白が骨格筋の状態を把握するためのバイオマーカーとして利用できることを見出した。これらの結果より、血液中のA蛋白を測定するため、申請者等が開発した高感度同時多項目測定(MUSTag)法を用いて、測定法の開発を行った。これまでの結果として、(1)A蛋白に特異的に反応するペアーの抗体を決定。(2)改良MUSTag法として、磁気ビーズを用いたバックグラウンドの低減と高感度を目指し、さらにアッセイ法の最適条件を決定した。感度を評価したところR2≧0.95法で16 pg/mL、3×S.D.法で0.6 pg/mLであった。本改良MUSTag法にて述べ2,000例以上の患者サンプルでの検定を行った。血清中のA蛋白の濃度は、正常位被験者で約300 pg/ml以下であったが、患者対象被験者では500-4800 pg/mlの範囲で拘置が認められた。(3)TGF-b等のサイトカイン等の検討では、測定範囲内では有為に病状に相関するものが明確に決定できなかった。これらの結果から対象患者の血中A蛋白量は、骨格筋量が多く同化作用が促進する(anabolic)環境では値が増加し、一方、代謝の亢進、炎症といった異化作用が促進する(catabolic)環境では値が減少する可能性が強く示唆された。
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