血液中には臓器や組織と同様にmRNAやnon-coding RNAの膨大な発現情報がある。次世代の臨床検査は、第4世代シーケンサー等の遺伝子解析手法の飛躍的な進歩により、蛋白等による診断では行えない、疾病の初期の兆候を捉える高感度な血液RNA診断が可能となる。我々が別課題で実施したマイクロアレイを用いた疾病モデル動物の全血RNA遺伝子発現解析を行う過程で、疾病の進展に伴い白血球と全血の遺伝子発現プロファイルの相関が低くなり、データ解析により血液RNAに対する臓器由来RNAの影響が確認された。そこで本研究では、臓器由来RNAを指標とする血液RNA診断の可能性を探索する。正常状態とストレス負荷状態の全血、白血球、血漿、臓器(肝臓、筋肉等)のRNAの遺伝子プロファイリングを系統的に行い、生理状態の変化に伴う血液RNAの挙動を理解、把握し、血液RNA診断の基盤情報とすることを目的とした。 平成27年度は前年度に引き続き標準RNA(定量解析用リボ核酸(RNA)水溶液)を用いて、細胞破砕、クロロホルム生成、エタノール沈殿の各処理における回収効率の評価、逆転写やPCR反応に対する阻害率の評価を行った。その結果、生体試料からRNAを抽出する各過程で回収ロスが生じること、また、生体試料からの抽出RNAは、RNAを評価するための、転写反応やPCR反応に対する阻害物質を含むことが確認した。 血液は他の臓器と比較すると単位容積当たりの細胞数が非常に少なく、かつ様々な生体由来の有機化合物を含んでおり、抽出効率や反応阻害の影響を受けやすいことが予想され、今回の検討から、これらの影響は無視できないものであることが判明した。この為、血液RNA診断においては、常にこれらの影響が存在を考慮した評価が必要であることが確認した。
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