研究課題/領域番号 |
25670285
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 貴之 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30303845)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | しびれ / オキサリプラチン / 末梢神経障害 / 末梢血流障害 / 疼痛 / TRPA1 / 活性酸素種 / 虚血/再灌流 |
研究概要 |
しびれ発症機構を解明するため、まず、しびれ様動物モデルの作製を行い、その分子機構を、redox感受性TRPA1を中心に解析した。白金製剤オキサリプラチン投与直後~数時間後に、冷刺激で誘発するしびれや異常感覚などの急性末梢神経障害が惹起されることが知られているが、マウスにオキサリプラチンを投与すると同様の時間経過で冷過敏応答が認められた。また、その応答に冷侵害受容器TRPA1が関与することをTRPA1遺伝子欠損マウス、阻害薬、さらに単離後根神経節(DRG)ニューロンを用いた解析により明らかにした。また、ヒトTRPA1を発現させた細胞において、オキサリプラチンはTRPA1を介したCa2+流入を惹起することを明らかにし、その反応には活性酸素種(ROS)の産生が関与すること、TRPA1 N末端の複数のシステイン残基の酸化修飾が関与することを明らかにした。また、過酸化水素の足底内投与により惹起される疼痛行動は、オキサリプラチンの前投与により有意に増悪した。これらの結果から、オキサリプラチン投与数時間後に惹起される冷過敏応答は、急性末梢神経障害時のしびれや異常感覚を反映しており、ROS産生によるTRPA1の活性化が寄与すると考えられる。一方、末梢血流障害時のしびれを再現するため、マウスの後肢を強く結紮し、1時間後、血流を再開させることにより、後肢血流障害部位へのlicking行動が観察された。また、後肢結紮中、および再灌流2時間後程度まで、触刺激に対する感覚鈍磨が惹起されていた。このマウス後肢虚血/再灌流によるしびれ様行動は、ROS捕捉剤や抗酸化剤で抑制され、また、TRPA1遺伝子欠損マウスおよび阻害薬によっても抑制された。これらの結果から、マウス後肢虚血/再灌流によって誘発されるしびれ様行動にはTRPA1のROSによる活性化が関与すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初より計画していた2種類のしびれ様動物モデルについて、研究開始初期より確立することができ、研究がスムーズに行えた。また、しびれ様行動にはTRPA1の過敏化、活性酸素種による活性化などの仮説がほぼ証明でき、一部、関与するアミノ酸を同定することまででき、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、TRPA1の低酸素感受性機構に着目し、TRPA1の過敏化の分子機構をより詳細に解析することにより、しびれ発症機構を分子レベルから明らかにする。また、初年度に確立した2種類のしびれ様動物モデルだけでなく、より臨床でのしびれに近いモデル(糖尿病性末梢神経障害時のしびれ、末梢動脈閉塞時のしびれ)を確立することも目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究計画自体は順調に進行しているが、米国Jakson社から新たに購入したトランスジェニックマウスの学内での組換えDNA実験計画、動物実験計画の承認が遅れ、さらに輸入手続き等にも時間がかかってしまったため、当初計画していた動物飼育施設利用料、動物飼育・繁殖に関わる費用が本年度はほとんどかからなかったため。 トランスジェニックマウスの承認、購入・輸入の手続き等の遅れを平成26年度の前半で回復させるため、動物飼育・繁殖のスペースを当初予定よりも拡充し、ペースアップを図り、当初計画通りの研究を実施する。
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