研究課題/領域番号 |
25670299
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安藤 眞一 九州大学, 大学病院, 学術研究員 (90575284)
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研究分担者 |
西坂 麻里 (小西 麻里) 九州大学, 大学病院, 学術研究員 (00448424)
樗木 晶子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授(Professor) (60216497)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 睡眠時無呼吸症候群 / 睡眠呼吸障害 / ダウン症候群 / いびき / 睡眠体位 / 肥満 |
研究概要 |
平成25年度においては、ダウン症患者150名の養育者を対象として、睡眠呼吸障害(SDB)が疑われる症状や普段の睡眠体位、心疾患の合併などに関する質問票調査を実施した。その結果、回答のあった90名中、いびきが71%、夜間覚醒が59%と一般人口より高率に見られ、海外と同様にわが国のダウン症患者も高率にSDBに罹患している可能性が示された。また肥満は、本研究対象全体の32%に存在したが、特に16歳以上群においては48%に存在し、他の年齢群よりも有意に高率であった。さらに、肥満は一般人口における重要なSDBの危険因子であるが、本研究対象ではSDB症状との関連が見られず、ダウン症患者に合併するSDBは、肥満以外の解剖学的要因による影響がより大きいと思われた。ダウン症患者に多く見られる特徴的睡眠姿勢は、対象全体の27%に存在したが、特に6~15歳群においては52%に存在し、1~5歳群や16歳以上群に比べて有意に高率であった。これは、1~5歳のダウン症患者においてはまだ座位が安定せず、特徴的睡眠姿勢の保持が困難であり、16歳以上群では、関節の柔軟性が失われつつあるために特徴的睡眠姿勢の保持が困難となっていることが原因と推察された。また、特徴的睡眠姿勢は睡眠中の舌根沈下を防ぎうる姿勢であり、SDBへの防御姿勢として出現している可能性があると考え調査した。その結果、特徴的睡眠姿勢群においていびき・無呼吸が高率に存在したが、統計的な有意差には届かなかった。この結果から、特徴的体位を有するダウン症患者は高率にいびき、無呼吸を有しているにも関らず、特徴的睡眠姿勢によって症状を緩和している可能性が考えられ、我々の仮説は支持された。今回の調査では、心疾患の有無とSDB症状の頻度の間には有意な関連が見られなかったが、今後の課題として、心疾患の重症度や、治療状況に関して詳細に調査する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、福岡県のダウン症患者150名の養育者を対象に、SDB症状と睡眠時体位、および心疾患の実態に関して質問票による主観的評価を行う計画であった。回収率は50%程度と予測していたが、結果として、予測を上回る90名(60%)から回答があり、計画通りに分析を完了した。その結果、これまで海外の小規模検討で報告されてきたように、ダウン症患者におけるSDB有病率はわが国でも同様に高い可能性が示され、さらに睡眠体位や肥満以外の解剖学的要因がダウン症者のSDBに特有の危険因子である可能性も示された。 また、平成26年度に計画しているパルスオキシメーター調査に向けた準備としては、すでにパルスオキシメーター5台、および解析ソフトは入手しており、機器面の準備はほぼ完了している。現在は、パルスオキシメーター調査時において、養育者が記入する睡眠記録調査の作成を行う傍ら、パルスオキシメーター調査に同意の得られた研究対象者へのインフォームドコンセント活動を行っている。計画通り、4月よりパルスオキシメーターの発送を行っていく予定である。 さらに、本研究課題におけるここまでの成果を国際学会(Sleep Medicine 14, Supplememt 1:e225,2013.)に発表でき、日本臨床睡眠医学会、日本循環器看護学会でも発表する事ができた。以上の理由より「(2)おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成26年度は、平成25年度に実施した質問票調査の回答者のうち、パルスオキシメーターによる調査に同意が得られた30名を対象として、計画通り、4月からパルスオキシメーター、睡眠記録用紙の発送を行っていく予定である。パルスオキシメーターを用いた客観的評価によって、SDBの有無・重症度に関するよりエビデンスレベルの高い実態調査を行う。パルスオキシメーターによる調査は3ヶ月で終了し、7月からは、得られた結果から年齢、肥満、特徴的睡眠体位、主観的なSDB症状との関連を検討する予定である。症例の蓄積が重要であり、将来の全国規模調査に向け、ダウン症協会に対し積極的に研究結果のフィードバックを行いながら、協力体制をさらに強固なものとしていく予定である。 解析終了後は、日本循環器学会、日本睡眠学会を始めとした国内学会、および睡眠を専門とした国際学会への成果発表を行う予定としている。また、その後は、海外の雑誌へ論文して成果発表を行う予定である。 尚、本研究における統計解析には昨年度から引き続き九州大学ARO次世代医療センターの生物統計専門家に協力を仰ぐ予定である。さらに、九州大学病院睡眠時無呼吸センターと樗木研究室は研究チームとして毎週、研究検討会を開催し、調査・解析が遅滞なく進行するように努める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に、データ入力・解析の補助者に係る人件費(@200,000 円)を計上していたが、解析等は自らで行った。 平成26年度は解析内容がより複雑、かつ膨大になることが予想されるため、その際に有効に活用できるよう、平成26年度への繰り越し金として計上することとした。 平成26年度は最終年度であり、学会発表もさらに増える予定である。そのため、国際学会を含めた学会参加のための旅費・宿泊費などが必要である。成果発表費用として、英語論文のネイティブチェックにかかる費用や論文投稿費用も計上予定である。 また、パルスオキシメーターのデータ解析は複雑であり、専門家の補助を得るための人件費、および資料収集費用も検討している。
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