本研究においては、「鶴岡市民を対象とした地域コホート研究」において調査参加に同意したものに対して、メタボローム解析を実施した。メタボローム解析は、キャピラリー電気泳動(CE)-MS法によりアミノ酸をはじめとする極性物質を、液体クロマトグラフィー(LC)-MS法により脂質類を測定することとした。LC-MS法については、本研究を通して疫学研究で用いるための前処理、測定条件の確立を進めた。その結果、前処理時にスピンカラムを用いるなどの新たな工夫を加え、サンプルの凍結安定性チェックや測定データのチェック体制を構築でき安定的な測定条件の確立が可能となり、最終的に血漿を用いて脂肪酸類、アシルカルニチン、酸化脂肪酸、リゾリン脂質、スフィンゴ脂質、胆汁酸類が測定できる系をほぼ確立した。また、データ解析については、コホート研究参加に同意し血漿を提供した者のうちメタボローム解析を終えたものを対象に、「健康の要因」として運動、飲酒、食事摂取を、「健康状態」として肝機能障害、高血圧、メタボリック症候群を取り上げ、CEーMS法で測定した血漿中代謝物との関連性を、交絡因子や多重比較性の調整を行いつつ検討した。その結果、飲酒、運動、蛋白質摂取のそれぞれに関連した血漿中のアミノ酸および関連代謝物質が同定された。また、飲酒による肝機能障害、メタボリック症候群に関連した代謝物も統計学的に明らかとなった。また食事からの栄養摂取と健康との関連性を評価するため、本研究では調査に用いる食事摂取調査票の精度、妥当性の検討も併せて行った。通常の食事摂取調査票に並行して秤量を用いる詳細食事記録調査を実施し、管理栄養士が両者の比較を行った。以上より、当初の目標であった「健康要因」の代謝物プロファイリングについて一定の成果を得るとともに、今後のコホート化へ向けた準備を進めることができた。
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