近年、ゲノムワイド関連解析において疾患の原因となりうる多くの遺伝子多型が同定され、多くの遺伝疫学研究が行われてきた。その一方、疾患感受性に大きな影響を与えている遺伝子多型はそう多くないことも指摘されている。その一因として、肥満をはじめとする生活習慣病は、飲酒習慣や運動習慣などの生活習慣をはじめ、様々な要因が複雑に作用し合って発症すると考えられており、従来の疫学研究では、交絡要因の影響を完全に排除することは困難である。そこで、本研究は、遺伝子多型を操作変数として用いることで、無作為化比較試験と同様の解析が可能と考えられているメンデル無作為群間比較という手法を用い、これまで明らかとなっていなかった環境要因と疾患との関連を明らかにすることを目的とした。 最終年度は、これまでに得られた研究参加者の遺伝子多型データを用い、操作変数法の一つである2段階最小二乗法を用い、さまざまな環境要因と疾患との関連を検討した。これまでに報告がなされている遺伝子多型と環境要因との関連を検討したうち、アルコール代謝に関連するアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の遺伝子多型のひとつであるrs671遺伝子多型が飲酒習慣と強い相関をもち、飲酒習慣の操作変数となることが認められた。そこで、rs671遺伝子多型を用い、BMI、血圧、ヘモグロビンA1cおよび血清脂質との関連について解析を行った。その結果、2段階最小二乗法により、LDL-C、収縮期血圧と飲酒習慣に有意な関連が認められた。しかしながら、糖尿病の指標となるヘモグロビンA1cと飲酒習慣には有意な関連は認められなかった。
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