粒径20nmおよび200nmの酸化チタン(ルチル型)を動物飼料に、0.5および5㎎/gとなるように均一に混入した実験用固形飼料を作成した。無添加固形飼料をコントロールとして、B6C3F1雌性マウスに50日間自由摂取させた。曝露期間終了後にマウスを二酸化炭素深麻酔下にて安楽死させ、脾臓を得て単離浮遊細胞とし以下の実験に用いた。一般的な免疫応答試験として、抗体産生応答、リンパ球幼若化応答、細胞表面マーカー解析を行った。抗体産生応答は、酸化チタンナノ粒子の粒径200nm、20nmのそれぞれ0.5および5㎎/gの各群において、対照群との間に有意な差は認められなかった。経気道曝露によるナノ粒子の生体内への侵入が100nmを境界として観察されるとの報告があることから、リンパ球幼若化応答について、酸化チタンナノ粒子の粒径20nmのそれぞれ0.5および5㎎/gの各群について影響を解析したところ、LPS刺激において優位性は見られなかったものの曝露濃度依存的に脾臓リンパ球の増殖活性の抑制が見られた一方、ConA刺激においては影響がなかった。また、胞表面マーカーにおいてCD4/CD8比率は酸化チタンナノ粒子の粒径20nmのそれぞれ0.5および5㎎/gの各群について影響は見られなかった。以上より、ルチル型酸化チタンの20nm径のナノ粒子の経消化管曝露による全身性免疫応答にたいして大きな影響は見られなかった。しかし、Bリンパ球増殖活性が抑制される傾向があった。実験動物の個体数が多く、曝露期間が長いなどの場合に有意な傾向が観察される可能性もある。また、消化管免疫応答などの局所性免疫応答についても検証する必要があろう。安全と考えられて食品添加物として用いられているが、より詳細な検証を行うことが、食の安全のためには必要と考える。
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