粒子状物質は呼吸器で慢性炎症を惹起し、発がんや線維化を起こす。本課題では、粒子状物質がエンドソームやリソソームに存在する分子を介して炎症反応と疾患をもたらす機構を解析した。多層カーボンナノチューブで処理した肺上皮細胞を用いた実験では、細胞傷害に伴い核蛋白HMGB1とDNAが放出され、近傍の細胞のリソソーム内のToll様受容体9を活性化して炎症反応とDNA損傷を起こす新規発がん機構を解明した。カーボンブラックや酸化インジウムのナノ粒子も同様の機構で炎症反応と遺伝毒性を起こす可能性を示した。粒子状物質を気管内投与したラットの肺組織では、多数の炎症およびリソソーム関連分子の発現上昇を認めた。
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