研究課題
宮城県岩沼市の生殖医療専門病院であるスズキ記念病院において実施されているBOSHI研究(母子健康手帳・家庭自己測定血圧に基づいた三世代(祖父母、父母、児)の血圧・環境・遺伝要因関連と生活習慣病発症に関する研究)参加妊婦において、不妊治療の有無による各種要因の比較を行った。 対象者の妊娠経過および分娩記録等に関する診療録転記が終了したため、前年度より対象者数を増やし、詳細な解析を行った。対象妊婦603名のうち、不妊治療を受けていた妊婦は54名、不妊治療なしの妊婦は549名であった。不妊治療ありの妊婦は、なしの妊婦と比べ、有意に妊娠時の年齢が高く、出産歴を有する妊婦の割合が少なく、父親の糖尿病家族歴を有する妊婦の割合が多かった。また、妊娠初期の尿中アルブミン値、妊娠中期の血中インスリン濃度、高感度CRP値が有意に高値であった。一方、妊娠高血圧症候群(PIH)の頻度は、不妊症の妊婦で13.0%(7名)、不妊症のない妊婦で8.9%(49名)であり、有意な差は認められなかった(P=0.33)。なお、不妊治療の有無で分娩季節に差は認められなかった。また、不妊治療の有無により、児の在胎週数、性別、出生体重、低出生体重児(<2500g)割合、身長・頭囲・胸囲、およびアプガースコア(1分)・(5分)に有意な差は認められなかった。スズキ記念病院の既存診療情報を用いた解析および産後の追跡調査に関しては、研究実施体制を整備し、追跡調査対象者約1000名に対する追跡調査の準備を進めた。
1: 当初の計画以上に進展している
平成26年度に、BOSHI研究参加者の妊娠経過および分娩記録等に関する診療録転記が終了し、不妊症の有無による対象妊婦の背景および出生児の出生時体重等の比較に加え、妊娠中の血液・尿検査や時のアプガースコア等の比較を行うことが可能な環境が整い、詳細な分析を実施し得た。また、産後の追跡調査および診療情報を用いた解析については、実施体制整備が完了し、追跡調査対象者約1000名に対して追跡調査ご案内および調査票送付準備を進めている。
BOSHI研究参加者における不妊症の有無に関する各種比較においては、不妊治療と糖尿病との関連が示唆された。今後は治療状況等を考慮の上、詳細な検討を進めると同時に、産後の追跡調査から得られる妊産婦合併症・児の発達障害との関連を検討する予定である。また、診療情報を用いた解析においても、特に糖尿病と不妊治療との関連を考慮のうえ、不妊治療が妊産婦合併症・児の発達障害に及ぼす影響に関する解析を進めたい。加えて、産後の追跡調査を実施する。
実施医療機関における体制整備に想定より時間がかかり、産後追跡調査の開始が遅れたため。
産後追跡調査のご案内・調査票の送付、および調査票データ入力のために繰越額を使用予定である。
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