研究課題
宮城県岩沼市の生殖医療専門病院であるスズキ記念病院において実施されているBOSHI研究(母子健康手帳・家庭自己測定血圧に基づいた三世代(祖父母、父母、児)の血圧・環境・遺伝要因関連と生活習慣病発症に関する研究)参加妊婦において、不妊症の有無による各種要因の比較を行った。2006年10月~2010年3月までにBOSHI研究の説明を受け、妊娠20週以前に同意し、単胎妊娠かつ妊娠20週以前に高血圧歴のない妊婦690人のうち、転院、流産、同意撤回、血圧値に欠損のある者を除外した603人を解析対象とした。このうち、不妊症の既往がある妊婦は54人(9.0%)であった。年齢は不妊症既往妊婦で33.8±4.0歳であり、不妊症既往のない妊婦31.3±4.8歳よりも有意に高かった(P<0.01)。その他、出産歴、服薬、父親の糖尿病既往歴に有意な差が認められた。妊娠中の家庭血圧値に関しては、妊娠全期を通しての血圧推移に有意な差は認められなかったが、分娩直前での血圧値は、不妊症既往ありの妊婦で既往なしの妊婦と比較して有意に高値であった(収縮期:不妊症既往あり/既往なし=114.0/110.4mmHg、P=0.02; 拡張期: 不妊症既往あり/既往なし=72.0/67.6mmHg、P<0.01)。一方、妊娠高血圧症候群の発症率に有意な差は認められなかった(不妊症既往あり:13.0%、不妊症既往なし:8.9%、P=0.3)。また、スズキ記念病院の既存診療情報を用いた解析および産後の追跡調査に関しては、研究実施体制を整備し、追跡調査対象者約1000名に対する追跡調査の準備を進め、210名に対し追跡を実施した。
1: 当初の計画以上に進展している
平成26年度に完了した妊娠経過および分娩記録等に関する診療録転記、および家庭血圧データ整備に基づき、不妊症の有無による対象妊婦の背景および出生児の出生時体重等の比較に加え、妊娠中の家庭血圧値推移等の比較を行うことが可能な環境が整い、詳細な分析を実施し得た。また、産後追跡調査の体制を整備し調査を開始した。
不妊症の既往がある妊婦では、不妊症の既往がない妊婦と比較して妊娠40週の血圧が高値であった。今後、不妊治療の詳細およびより対象者数を増やした集団での検討を行う予定である。加えて、産後の追跡調査を継続、データを集積し、不妊症と母親の血圧推移・疾患発症や児の発達障害との関連を検討したい。
実施医療機関における体制整備に想定より時間がかかり、産後追跡調査の開始が遅れたため。
産後追跡調査のご案内・調査票の送付、および調査票データ入力のために繰越額を使用予定である。
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