研究課題/領域番号 |
25670315
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 由光 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40450598)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 重複受診 / 社会ネットワーク分析 |
研究概要 |
本研究では、同一疾病で複数の医療機関に受診する「重複受診」の抑制および医療費適正化のために、保険者(市町村や健康保険組合等)のレセプトデータを利用し、患者の重複受診行動の要因解明を目指している。特に、受診行動を患者と医療機関の関係ととらえ、社会ネットワークの視点から検討する。 保険者が所有する全レセプトデータを用いることで、網羅的に被保険者(=患者)の受診行動を把握することが可能である。初年度である2013年度は、複数の健康保険組合のレセプトデータを取得し(2010年~2012年の3年間、約1,000,000人)、解析用データベースを作成した。重複受診は、同一疾病で複数の医療機関に受診することであるが、レセプトデータより疾患名を同定することは必ずしも容易ではない。そのため、「重複受診」を同定するために、医療用医薬品の分類である解剖治療化学分類(ATC分類)により同一薬効の医薬品の処方を用いることとした。パイロット研究として、1か月分のデータを用いて横断的な分析を行った。同一患者に同一薬効の医薬品を処方している医療機関の数について検討を行い、抗菌薬、抗ヒスタミン薬、精神抑制薬等では、同一薬効の医薬品が、複数の医療機関より処方している実態が明らかになってきた。次年度以降は、特定の疾患に着目した重複受診行動の検討を行うとともに、経時的な処方の変化についても検討を行う。 また、Rを用いて社会ネットワーク分析のプログラミングを行った。社会ネットワーク分析学会(International Network for Social Network Analysis)にて情報収集を行い、最新の社会ネットワーク分析手法について検討を行っている。次年度以降は、1,000,000人のデータを用いたネットワーク分析を実施していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画では、データ取得と、分析の方法論の検討および分析データセットの完成を目指していた。データ取得は予定通りに行えた。また、分析の方法論についても、国内外にて情報収集を行い、検討を行った。また、分析データセットについても、リレーショナルデータベースを構築するとともに、Rよりデータベースに接続し直接開発するためのインターフェースを完成させた。以上より、順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
計画書通りに、データの解析および方法論の開発を行う。全体的な重複受診の割合を明らかにしていくとともに、2013年度のパイロット研究で重複受診が多くなっていることが示唆されたアレルギー疾患や精神疾患に関して詳細な検討を行う。また、疾患および処方状況を適切に判断するために、医師であり、レセプトデータ研究での実績もある中山健夫氏を分担研究者に追加する。あわせて、時系列変化を考慮した社会ネットワーク分析の方法論の検討開発も実施していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度は、レセプトデータの取得およびデータベース作成が順調に行えたため、物品費および人件費を節約することができた。しかしながら、想定より多い3年分の1,000,000人というレセプトデータを取得できたため、データベースのデータ量が想定より多くなり、新たなコンピューター環境が必要となった。次年度(2014年度)に、構築する予定である。 研究計画書通りに、研究の打合せ・情報収集の国内外旅費、研究資料の収集/データクリーニング等を行う研究協力者への人件費・謝金、通信費、運搬費等に使用する予定である。また、リレーショナルデータベース運用およびRによるビッグデータ解析に向け、サーバーの購入、および研究分担者追加による分担金として使用する予定である。
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