転売目的のために複数の医療機関から不適切に大量の向精神薬を入手したことがニュースなどでも報じられ、重複受診および重複処方への、社会的関心が高まっている。厚生労働省も、重複受診の自主規制を呼び掛けているが、その包括的な実態はわかっていなかった。本研究では、健康保険組合の被保険者124万人のレセプトデータ(2012年12月)を用いて、外来患者における全医薬品別の処方の割合および重複処方の割合を、年齢グループ別に明らかにした。また、ネットワーク分析を用いて、重複処方医療機関ネットワークの構造を明らかにした。 頻繁に処方されている医薬品ほど重複処方割合が高く(咳および風邪薬や、全身用抗菌薬は1割程度)、一般的に処方されている医薬品では、常に重複処方について留意すべきであることが示された。ただし、降圧薬や脂質異常症治療薬は、高齢者で広く処方されているが、ほとんど重複処方はみられなかった。3医療機関以上からの重複処方もほとんどみられなかった。しかしながら、抗精神病薬について、1か月の間に10医療機関以上から入手している患者もおり(2名)、非常に限定的な特定の少数の患者が重複処方を行っている実態が明らかになった。
|