研究実績の概要 |
本研究はX線デジタル画像におけるじん肺表示条件と一般胸部条件との比較を行い、実際の検診の際にじん肺画像と腫瘍を疑う孤立性陰影をともに適切に表示できる条件を探索することを目的とした。じん肺症例100例及び、労働衛生期間において1年間を通じてデジタルエックス線装置で撮影を行った検診受診者の画像について処理前画像データ収集し、メーカー推奨の一般胸部条件及びじん肺条件は厚生労働科研(村田班)が提唱した条件の中から、今回用いたフラットパネル型デジタルエックス線装置の処理条件を用いて読影実験用画像を作成した。じん肺条件と一般胸部条件との比較には訓練された上級読影者(US NIOSH B reader)と一定の訓練を受けた読影者(AIR Pneumo reader)とによって実施した。画像評価は全国労働衛生団体連合会のエックス線専門委員会の精度評価に使われる画像評価を参考に主観的評価を行った。また、じん肺画像についてILOエックス線分類を用いて、それぞれ読影した。一方で、物理的評価によってじん肺条件と一般胸部条件の特徴を見いだすべく、検討を行った。 その結果、陰影密度については、読影者間および読影者内とも一致(κ:0.41~0.49)しており、じん肺条件が一般条件に比べて、読影者間誤差が小さい傾向にあったが、その差は僅かである(κ:じん肺0.48, 一般0.44)。一方、大陰影では、読影者BはA(上級読影者)に比べて、読影者内誤差が大きかった(κ: B 0.67, A 0.81)。じん肺条件は一般条件に比べて、読影者間誤差が大きい(κ:じん肺0.62vs. 一般0.51)。これは、先鋭化度やノイズ低減などの画像処理条件の違いが原因と考えられる。
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