研究実績の概要 |
[背景]当直業務に伴う睡眠不足は医師の健康を脅かす。さらに睡眠不足による当直翌日の眠気、覚醒レベル低下は医療事故の原因ともなる。本研究の目的は、当直中の勤務体制の違いにより、当直中の睡眠の量・質に変化が生じるのかを明らかにすることである。 [方法]2013年8月1日~2014年7月31日を研究期間とし、大学病院に所属する初期研修医のうち、同意が得られた者を研究対象とした。研修医は「患者受診時に診療に応じる従来型の夜間当直体制(以下N)」「シフト勤務体制前半(18:00~1:00am; 以下S1)」「シフト勤務体制後半(1:00am~8:00; 以下S2)」の全部または一部で当直業務に従事した。当直中の自覚的(セントマリー病院睡眠質問票)・他覚的(アクチグラフィー、睡眠脳波計)な睡眠の量・質について測定を行った。 [結果]当初登録した23名の研修医のうち、種々の理由で8名を除外し、計15名のデータを解析対象とした。主観的睡眠評価では、「主観的睡眠深さ」「起床時に頭がすっきりしていたか」「睡眠満足感」の3項目について、有意にS1の方がNよりも点数が高かった(P=0.015, <0.0001, 0.017)。客観的睡眠評価では、総睡眠時間はS2よりもNの方が長かった(P=0.006)が、睡眠の質の指標としてのノンレム深睡眠の割合は、S1 27.0±10.5% vs N 11.0±9.1%(P=0.016)、S2 34.6±19.9% vs N 18.2±1.1%(P=0.042)で、S1, S2の方がNよりも睡眠の質が高かった。 [考察]S2と比べてNの方が総睡眠時間が長かったのは、診察患者数が有意に少なかったことが原因と考えられた(Nは新患には対応せず、かかりつけ医のみに対応)。シフト勤務体制の方が患者受診時に診療に応じる従来型の夜間当直体制よりも自覚的・他覚的な睡眠の質が高かった。
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