職場環境中には多数の化学物質が存在しているので、労働者の健康リスクは、複数の化学物質の同時曝露(複合曝露)を考慮する必要がある。しかし、化学物質のリスク評価は化学物質ごとに実施されている。本研究は、歴史的コホート研究等によって、化学物質の複合曝露を受けた労働者の発癌リスクを評価し、以下のことを明らかにした。1. 発癌性化学物質は、既知の標的臓器以外の部位の発癌性を高める可能性があるが、発癌性化学物質の複合曝露による発癌リスクには相加的効果や相乗的効果は認められなかった。2. 発癌性化学物質の取扱い歴のない労働者集団では、職場で取扱った化学物質の複合曝露による発癌リスクの上昇は認められなかった。
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