高知大学医学部附属病院の医療DBには過去30年間に約26万人の患者が登録されており、基本的生化学検査5項目(RBC、WBC、尿素窒素、総蛋白、GOT)すべてが基準値内にある患者(健常個体に近い患者ということで、準健常個体と以下呼ぶ)が約5万人おり、かつ長期間に何度も受診している準健常個体が一定数いることを前年度の研究で確認できた。さらに、準健常個体が最も多かった50代女性について、虚血性心疾患発症への血中総コレステロール値(T-C)の影響評価を行い、概ね他のコホート調査結果と一致する結果が得られることを確認できた。しかし、基本5検査だけでは初期癌の患者などが含まれ得るので、本年度はより厳しく対象者を選別し、追跡開始時のT-Cレベルも3群(200mg/dl未満、200mg/dl以上240mg/dl未満および240mg/dl以上)に分けて追跡調査した。 本調査では追跡対象コホートは、準健常とした判断した時点から3ヶ月以内に12日以上の入院または侵襲の大きな手術がないこと、および5年以上の受診歴、5回以上の再来受診、1ヶ月以上の再来受診間隔があることを満たす1985年から5年間に初回受診した50代女性の準健常個体で構成することとした。追跡調査期間は7.5年とし、途中で受診を止めた個体も含めた。 3群についてKaplan-Meier法で虚血性心疾患発症の生存率を求め、Log rank検定により血中T-Cレベルの影響を評価した。結果としては、240mg/dl以上の群が他群より虚血性心疾患発症率が有意に高いこととの結果が得られたが、高脂血症のボーダーラインである200mg/dl以上240mg/dl未満群は200mg/dl未満とほぼ同じ発症率であった。ボーダーライン群ではT-Cレベルが追跡調査期間中に変移する個体が約半数あり、初期値の評価方法について更なる検討が必要であることが認識された。
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