研究課題
挑戦的萌芽研究
ストレス状況下において、視床下部-下垂体-副腎システムが恒常性維持のために重要である。この経路に関わるコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)の増加はこの経路に悪影響を及ぼし、精神的な問題を惹起する。その遺伝子発現はストレス下で一過性に増強され、その後に抑制を受けるが、その抑制に視床下部室傍核の神経細胞のGlucocorticoid receptorが関わっている。自殺者脳を用いた研究では、子供時代に虐待を受けたヒトではそのGlucocorticoid receptor (NR3C1)遺伝子プロモーターにメチル化の増加が観察されている。以上より、虐待を受けたヒトではGlucocorticoidによる抑制が効かず、CRHが増加した状態が続き、ストレスに対する抵抗性の低下や精神的な問題を生じやすくなるのではないかと推論されている。そこで、虐待死亡事件例の解剖時に保存された脳からDNAを抽出し、DNAメチル化の検索を行う計画である。平成25年度には、コントロールの脳から作製されたパラフィン包埋切片からQIAamp DNA FFPE Tissue Kit (QIAGEN社)を用いてDNA抽出を行い、良好なDNA抽出を実現するために、試薬量、組織面積やプレパラート数の条件検討を行い、条件設定を行えた。次に、EpiTect Bisulfite Kit (QIAGEN社)を用いてDNAのバイサルファイト処理を行い、良好なバイサルファイト変換を実現するために、試薬量、DNA量の条件検討を行い、条件設定を行えた。一方、細胞の種類によってDNAメチル化が変化することから、細胞収集の選択性を高め、異種類の細胞を排除した形でDNA抽出を実現するために、ZEISS社製PALMレーザーマイクロダイセクションシステムを利用した細胞収集とDNA抽出、バイサルファイト処理を行うための予備実験を行った。
3: やや遅れている
研究の進行が遅れているが、細胞の種類によってDNAメチル化が変化することから、異種類の細胞を排除し、細胞収集の選択性を高めるために、ZEISS社製PALMレーザーマイクロダイセクションシステムを利用することを加えたため、細胞収集とDNA抽出、バイサルファイト処理を行うための予備実験を行っており、レーザーマイクロダイセクション装置の使用方法、微量なサンプルの取扱いに関する手技等の習熟に時間を要したことが挙げられる。
細胞の種類によってDNAメチル化が変化することから、異なる種類の細胞を排除し、細胞収集の選択性を高めるために、医学系研究科共同利用機器部門に導入されたZEISS社製PALMレーザーマイクロダイセクションシステムを利用することとした。HE染色標本だけでなく、免疫組織染色標本からも細胞収集が可能であることから、特定の抗原が発現している細胞を選択的に収集し、DNA抽出、バイサルファイト処理を行い、DNAメチル化を検索する予定である。レーザーマイクロダイセクションの利用により、神経細胞、神経膠細胞、脳室上衣細胞、血管内皮細胞等の区別を厳密に行い、脳の部位と細胞特異的なDNAメチル化の検索が可能となり、より厳密なDNAメチル化の評価が可能となると思われる。今後はレーザーマイクロダイセクションの利用を加味したDNAメチル化の検索を行うこととする。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件)
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