研究課題
平成27年度は、虐待死亡例及び同年齢の内因性急死例の解剖時に保存された脳から、大脳皮質、海馬、扁桃体、小脳等についてパラフィン包埋切片を作製した。左右海馬からZEISS社製PALMレーザーマイクロダイセクションシステムを利用して、神経細胞層を特異的に切り出し、そこからQIAamp DNA FFPE Tissue Kit(QIAGEN社)を用いてDNAを抽出し、そのDNAにEpiTect Bisulfite Kit(QIAGEN社)を用いてバイサルファイト処理を施し、プロモーター1Fを標的にPCRを行い、PCR産物をクローニングベクターpUC118に組み込み、各クローンの塩基配列を調べることでメチル化の検索を行った。結果は、虐待例の海馬で24アリルを調べたところ、左海馬では12アリル中の5アリル、右海馬では12アリル中の7アリルにメチル化が認められた。ほとんどのメチル化部位は転写因子NGFI-Aの認識配列に位置し、2箇所以上のメチル化を有するアリルが5アリルあった。一方、内因性急死2例を調べた。一例では左海馬8アリル中の2アリル、右海馬11アリル中の1アリルにメチル化が認められた。調べた範囲で2箇所以上のメチル化を有するアリルは無かった。他方、左海馬16アリル中の全アリルにメチル化が認められたが、そのメチル化部位は一箇所であり、その他にメチル化をもつアリルは3アリルであった。調べた範囲で、全アリルで見つかったメチル化を除くと、2箇所以上のメチル化を有するアリルは無かった。但し、内因性急死例のメチル化部位は転写因子NGFI-Aの認識配列に位置していなかった。以上から、非虐待例に比較して虐待例では海馬のDNAメチル化が増加しており、特に転写因子NGFI-Aの認識配列にメチル化が存在することが特異的であった。
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Vox Sang
巻: 108 ページ: 310-313
10.1111/vox.12216
巻: 108 ページ: 302-309
10.1111/vox.12220