研究課題
挑戦的萌芽研究
ヒトの虚弱状態 (frailty、フレイル) は要介護状態の前段階として捉えられ、今後介護予防の観点から超高齢社会を迎えた我が国にとっては重要な病態である。一般に、1.体重減少、2.活動量の低下、3.筋力低下、4.身体機能の低下(歩行速度の低下など)、5.疲労 の5項目の内3項目が当てはまる対象者をフレイルと診断する。今回我々はこれらのフェノタイプをマウスで再現できるか否かを老化促進マウス(senescence-accelerated-prone mouse: SAMP10)を用いて、40週齢までフォローし検討した。5.の疲労度に関してと4.の身体機能の低下に関しては持久力として評価した。実際には持久力はトレッドミルテストを用い8週齢から4週ごとに測定した。活動量は運動量測定装置 (LOCOMO,LS-5(マウス用), アプリケーションプログラムCIF3WinMini4,メルクエスト)を用い16時から翌日10時までの行動量を測定した。筋力は小動物用握力メーター(Columbus社)を用い、2週間ごとにマウスの前肢の握力を測定した。体重は25週齢で32.3±0.7g 、40週齢で31.5±4.5g (n=7) と40週齢ではばらつきが大きくなるが25週齢時との間に有意な減少は無かった。持久力はトレッドミルテストで継続してベルト上を走ることができた時間で表すと、28週齢で38.1±20.1分であったのが、40週齢では30.0±13.2分(n=7) と明らかに加齢と伴に持久力の低下を認めた。活動度に関しては12, 20週齢の比較しか現在実施できていないが、加齢と伴に活動量の低下を認めている。握力は28週齢で80.7g、40週齢で102.7gと有意な加齢変化を認めなかったが、現在例数を増やしてなお検討中である。
2: おおむね順調に進展している
SAMP10の虚弱(frailty)の実験計画はほぼ計画通り(75%以上)実施できており、特に問題なく、平成26年度の研究に移行できる。ただ、対照群の研究が少し遅れているが、これも平成26年度には終了可能である。
次年度は対象としてSAMR1もしくはC57BL6を用いる実験を継続する。申請書にも記載したがSAMR1は体重がもともと大きく、SAMP10の対象として使用するのには疑問があり、C57BL6を用いて検討する計画でいる。また、これまでの解析ではSAMP10は40週齢という比較的若い時期に持久力の著しい減少はあるものの体重減少、握力の減少は顕著ではなかった。活動力に関しては次年度さらに症例を増やして検討するが、現時点では加齢と伴に活動量が明らかに減少した。体重減少は認めなかったが、実際に筋肉量の減少はどうか、また食事摂取量の変化などの解析が必要であり、次年度の課題とする。またタンパク質、遺伝子解析は順調に実施できているが、解析半ばであり、計画通り継続解析できる。
対照実験を平成25年度から開始する予定であったが、対象として使用したSAMR1マウスは体重が想定した以上に大きくなり、SAMP10の対象として使用するのには疑問があり、C57BL6マウスを用いることに変更した。その為、当初の計画よりも少し遅れ、この対照研究に必要な試薬等の購入に関しても次年度に移した。今年度対照群の虚弱(frailty)フェノタイプの出現につき、計画通り実施する。
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